圧倒的国民の支持で誕生した李明博大統領が、就任107日で足元が大きく揺らいでいる。発端は米国産牛肉の輸入全面解禁。「国民の健康を米国に売り渡すのか」と怒った40日前の市民の小さなロウソク集会が日を追うごとに拡大。大統領直接選挙制を勝ち取った1987年の6・10民主化抗争21周年記念日に当たる10日、ソウルでのロウソク集会・デモは、牛肉問題発生以来最大となる70万人(主催者発表、警察推計で午後10時現在10万人)にふくれあがり、ソウル市庁前広場を中心に都心を埋め尽くした。李大統領の退陣を要求するスローガンも登場、大規模反政府デモの様相を呈した。政府は、憤怒のロウソクデモの前に頭を垂れ、国政刷新を約束した。すでに青瓦台(大統領府)の大統領室長と首席秘書官全員の辞意表明に続き、韓昇洙・国務総理以下全閣僚が辞意を表明している。かつてない国政混乱の中、人事刷新をはじめ政府の対応は正念場を迎えている。
ロウソク集会を主催した「狂牛病の危険のある米国産牛肉の全面輸入に反対する国民対策会議」は参加者を70万人と推定しており、民主化抗争以降で最大規模のデモになったと主張している。参加者は各界各層、小学生から老人まで多様だ。
警察庁は、今回の「100万人ロウソク大行進」に備え、全国の警察に甲号非常を発令、100%動員体制を敷いた。青瓦台に通じる3カ所の大通りには高さ5・4㍍の大型コンテナ60個でバリケードを築き進入を遮断した。一部デモ隊は大型発砲スチロールで階段を作りバリケードを超えようとしたが、「平和デモ」を叫ぶ市民がこれを思いとどまらせた。小競り合いが起こる場面もあったが、大きな衝突はなかった。
デモ隊は、午後7時から光化門の世宗路と太平路一帯で牛肉再交渉、李政権の審判を求め、世宗路交差点の李舜臣将軍銅像前から太平路、南大門付近まで都心大通りをロウソクで埋め尽くした。ソウル市庁前を中心に半径2~4㌔は文字通り解放区になった。夜通し運動を続けた市民も1万人ほどにのぼり、翌朝の通勤通学の足にも影響した。
ソウル以外でも、光州で1万人が参集するなど全国の80の市・郡で集会が開かれ、6万3000人(警察推計)が参加した。パリでも韓国人留学生や在仏同胞らがエッフェル塔で集会を開き呼応した。