韓国最大の大企業グループ総帥である李健熙サムスン会長が退陣した。後継者と目されている息子の李在鎔サムスン電子専務も顧客総括責任者(CCO)の座を退き、海外勤務に就く。さらに、グループ全体のコントロールタワーだった戦略企画室を解体、同室長でナンバー2の李鶴洙副会長も辞任する。サムスングループの経営陣は22日、ソウル大平路のサムスン本館で記者会見を開き、このような破格的内容の経営刷新案を発表した。特別検事チームの捜査結果発表から5日後の決断だ。系列会社59社、従業員25万人、韓国GDPの2割を占めるサムスンの李会長退陣は予想を超えたもので、衝撃とともに波紋が広がっている。(2面に関連記事)
会見にはサムスン首脳陣30余人が出席、李会長自ら、「国民への謝罪及び退陣声明」を読み上げた。
「私は本日をもちましてサムスンの会長職を退くことに致しました。まだ進む道は果てしなく、すべきことも多く残されており残念な限りですが、過去の咎はすべて私が引き受けることにしました。私から始まった特検問題で国民のみなさまに多大なる心配をおかけしました。心からお詫びを申し上げ、これによる法的・道義的責任を果たしたいと思います」
わずか3分。李会長が短い辞任声明を読み上げ退席すると、李鶴洙副会長が10項目からなる経営刷新案の詳細を発表した。
それによると、李会長はサムスン電子代表理事会長と登記理事、文化財団理事長など、サムスン関連の一切の職を辞任する。これにより、1987年の李ビョンチョル会長死去後、21年間にわたりサムスングループを率いてきた李会長は大株主の地位を維持するだけになった。李会長は特別検察の取り調べを受けた際、「私を含めた経営陣の刷新を検討する」と述べていた。「特検はサムスンに免罪符を渡し、終わりにした」との世論の批判にも答えなければならなかった。また、健康問題もあったという。
会長だけでなく、洪羅喜夫人も、リウム美術館館長、文化財団理事職などを退く。息子の李在鎔専務はCCOを辞任し、海外事業現場に配置される。一族支配の批判をかわし、ファミリーが責任をとる姿勢をみせたものだろう。
李鶴洙副会長が室長を務め、グループのコントロールタワーの役割を担ってきた戦略企画室は解体される。李鶴洙室長と、金仁宙戦略支援チーム長(社長)も、残務処理後に一切の職を辞し、経営の一線を退く。戦略企画室は、総帥が重要な決定を下すのに必要な情報を提供し、その決定を実行するとともに人事権を握る中枢機関であり、その解体は会長辞任と並ぶ大きな意味をもつ。今後グループの経営方式はCEO(最高経営責任者)中心に180度転換することを予告している。
李会長の借名口座財産(4兆5000億ウォン)は実名転換後、脱税分などをすべて納付した上で、残る全額を有益な方向で使用する方法を検討する。
支配構造に関しては、直ちに持ち株会社に転換するのは困難だが時間をかけて検討し、循環出資の解消へ向けサムスンカードが保有するエバーランド株式(25・64%)を4-5年以内に売却することを検討する。また、銀行業進出を放棄し、非銀行金融業種の育成に力を入れる。サムスン生命やサムスン証券など金融系列会社が借名口座や秘密資金づくりに関与したことが明らかになったのも背景にある。
また、李会長の退任後、サムスンを対外的に代表する人物には、サムスン生命の李洙彬会長を指名。系列社間の業務協議と調整を受け持つ社長団会議を実務支援し、対外的にグループの窓口と報道官の役割を担う業務支援室を役員2-3人で構成し、社長団協議会の下部に設置する。
戦略企画室解体などを6月末までに終えて、7月1日から施行する。