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2008/01/11

<総合>規制緩和で民間活力引き出す・新政権の国政方向

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    大統領引き継ぎ委員会メンバーと記念撮影する李明博次期大統領(中央右)、左側は李慶淑・引き継ぎ委員長

 来月25日就任する李明博次期大統領の新政府の輪郭が浮かび上がってきた。まず青瓦台(大統領府)を含めた政府機構をスリム化し、内閣を国政運営の中心に置く方向で検討されている。人材も合理化・効率化を重視した布陣になりそうだ。国民の期待が大きい経済政策は、公約の7%成長達成のため、民間の経済活力を引き出す方向でかなり大胆な規制緩和を推進することが確実視されている。国策銀行である産業銀行の民営化も進める。南北関係では、核放棄の条件付きながら北朝鮮経済支援のための400億㌦の国際基金をつくる構想を明らかにしている。

 昨年末に発足した大統領職引き継ぎ委員会(李慶淑委員長)は、新年の2日から1週間かけて、青瓦台と消防防災庁を除く57の中央行政機関を対象にした業務報告を実施した。現在、この業務報告結果をもとに、政府組織改編案などをまとめている。李次期大統領はその改編案などを参考に、14日にも記者会見を開き、今後の国政運営基調と政府組織改編方向を発表する予定だ。

 政府組織については、中央官庁の一部統廃合が実施される。現在の18部から14部に縮小する方針だ。官庁によっては人員が大幅に削減される見込みだ。青瓦台も安保室と政策室を秘書室に一本化することになる。また、当初青瓦台の秘書官をコントロールタワーにする案も検討されたが、国政運営の中心軸を内閣に置き、青瓦台は大統領と内閣間の意思疎通を円滑にする機能を遂行する方向に傾いている。この場合は、青瓦台組織は実務型に様変わりする。

 内閣中心型になれば、今後の人選が注目されるが、国務総理を含め「仕事中心」で起用する方針という。ともかく政府組織をスリム化することが原則になっており、無駄を省き合理化・効率化を徹底的に推し進めるという経済界出身の李次期大統領らしい考え方だ。

 経済政策は国民の最大の関心事だ。李次期大統領の公約は年間7%成長。今年の各機関の成長率見通しは良くて5%で、4%台後半が多いが引き継ぎ委は、目標を6%台に引き上げたいと考えている。しかし、財政経済部は9日、今年成長率を4・8%とする経済運用計画を発表。このかい離をどう埋めるのかが当面の焦点となる。

 経済に対する新政府の基本的な考え方は、絶対的平等よりは機会の均等と個人の努力を重視する「成長至上」といえる。そのため、各種規制を緩和し、外国人投資の誘致を果敢に推進する方針だ。その点で、引き継ぎ委員会の核心メンバーに2人の外国人が選ばれているのが注目される。

 1人は、司空壱・元財務部長官とともに国家競争力強化特別共同委員長に就任したデービッド・エルドン・ドバイ国際金融監督センター会長。ドバイ発展の立役者の1人だ。エルドン氏は4日、到着した金浦空港で、「韓国市場がドバイ並みに開放されれば国際的な金融中心地になりうる」として、「中東のオイルマネーが中国にいっているが、これを韓国に引っ張ってこなければならない」と強調した。
 
 もう1人は同特別委内の投資誘致チーム長に抜擢されたウィリアム・A・ライバック・金融監督院特別顧問。米国のFRB(連邦準備制度理事会)副局長などを務めた国際金融界の大物だ。来年着工をめざす大運河構想や新万金干拓地の活用のための巨額の外資融資に乗り出す布石とみられている。

 産業資本の金融資本への参入を規制している現行の法制度を改編する方向で検討している。引き継ぎ委が7日発表した産業銀行の民営化方針はその一環であり、最大の目的は世界的競争力を備えた投資銀行を育てることにあるとされる。また、民営化で得られる資金の一部を中小企業支援に充当する方針だ。だが、民営化方法をめぐっては異論もあり段階的に推進されそうだ。

 ともかく李次期政権の最大の課題は経済のパイ拡大であり、いかに副作用なく実現できるかが大きな課題だ。昨年末の韓国経済学会主催で開かれた「大統領当選者の経済公約の現実性検証」に関するフォーラムで、「7%成長に執着する必要はない。無理な景気浮揚を自制し、内外の与件変化に機動的に対処すべきだ」「成長による雇用増加効果が減退している。7%成長をしたとしても60万人の雇用創出は困難だ。産業別に綿密に検討する必要がある」と成長路線を牽制する声も少なくなかった。

 南北関係では、400億㌦の国際協力基金づくりが注目される。北朝鮮の核放棄が前提だが、ある意味で画期的だ。この基金には朝日国交正常化を見込んだ100億㌦の賠償金も計算に入れている。

 外交関係で注目されるのは韓日シャトル外交の復活だ。8日ソウルで開かれた韓日次官戦略会議では、首脳間の年内相互訪問などで一致した。また、次期大統領の親書を携えた特使団が15日から18日にかけて来日、福田首相らとの協議が予定されており、韓日関係は改善へ向け動き出した。