韓国経済がV字回復の勢いだ。韓国銀行の発表によると、第3四半期(7―9月)のGDP(国内総生産)成長率は、前期比2・9%を記録、前年同期比でも0・6%と1年ぶりにプラス成長に転じた。これを受け、尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)・企画財政部長官は28日の危機管理対策会議で、今年は年間を通してプラス成長が可能だと予想した。生産とともに投資と消費も上向いており、第4四半期(10-12月)に前期比0・5%以上の成長を記録すれば、年間でもプラス成長を実現する見通しだ。訪韓中のOECD(経済協力開発機構)のグリア事務総長も「2期連続で2%を超える成長は非常に驚くべき結果」と評価した。だが、景気回復の中でも雇用不振は続いており、先行きは必ずしも楽観できない。
韓国銀行は26日発表した第3四半期のGDP成長率が予想を上回る数値で、市場では“GDPサプライズ”と受け止められている。特に、前年同期比で0・6%の成長を記録したが、これは金融危機以降1年ぶりのプラス成長だ。
尹増鉉長官は、韓銀発表後に世界経営研究院主催の講演会で「年間成長率がプラスに転換する可能性がある」と述べ、「第3四半期の成長率は財政・為替・原油価格などの制約要因を考えると驚くべき水準であり、急速に状況が改善されている」と分析した。政府がプラス成長を公開的に言及したのはこれが初めてだ。「当初、韓銀は、今年はマイナス1%台と見ていた。
第3四半期の成長にはいくつかの特徴がある。まず民間部門で回復力を見せたという点だ。政府の税制支援などにより新車購入が増え、半導体と電子部品の販売が増えた。製造業部門の成長率が前期比8・7%を記録、低迷していた設備投資も8・9%増えた。ウォン安を背景に輸出も前期比で5・1%増えており、韓国経済が予想より早い速度で景気低迷から抜け出している。
また、韓銀調査によると、消費心理を示す指数が7年6カ月ぶりに回復した。10月の消費者心理指数が前月より3ポイント高い117を記録。
当初、政府の財政支出効果が弱まる下半期(7-12月)から成長率は再び鈍化するとの予測があった。だが、公共部門が主導した景気回復の流れを民間部門が受け継ぐ形となっている。
国際収支面でも不安は全くない状況だ。今年に入り経常収支の黒字基調が続き、9月末現在で322億2000万㌦を記録している。史上最大規模であり、年間では400億㌦突破が確実となっている。貿易収支の黒字幅拡大が大きく貢献している。
それにしても、韓国経済は他国と比べ回復が著しい。昨年第4四半期に景気が大きく後退した韓国は、危機序盤に強力な景気浮揚戦略を選択した。今年上半期に果敢な財政拡大政策を実行し、これが次第に消費など民間部門に波及。さらにウォン安、原油価格下落、中国経済の高成長などの要因が絡み合い、効果が倍増したとみられる。
だが、韓国経済が本格的な成長軌道に乗ったと見るには依然として無理がある。失業率が下がらない状態で「雇用のない成長」には限界がある。国際原油価格も1バレル=80㌦に上がり、為替相場も1㌦=1200ウォン台のウォン高に振れ出した。財政赤字負担によりこれ以上政府の財政拡大は期待しにくい。米国政府も追加の財政拡大に難色を示し、中国も景気過熱を沈静化させる動きをみせている。こうした内外に潜む変数も考慮しなければならない。
尹長官は、輸出は諸般の要因が不利に作用する素地があるため、内需に重心を置き、雇用拡大につなげねばならない」主張しているが、景気対策には万全を期す必要がありそうだ。