韓国で1997年の通貨危機以来の大掛かりな企業の構造調整が進行中だ。構造調整とは、一言でいえばリストラ再建策のことだ。今回の構造調整は通貨危機時とは違い、倒産状態に陥る前に企業体質を改善しようという事前布石的な性格をもつ。政府の号令のもと、産業銀行など債権団と該当企業が財務構造改善策などの約定を交わす形で進められている。直接的な原因は世界金融危機。財務構造が急激に悪化した建設や中小造船企業を対象に年初から開始され、現在は大企業を対象に手術が始まった。すでに錦湖アシアナなど11つの財閥グループで改善作業が進められている。また、信用リスク評価で不合格判定を受けた個別大企業434社から30社前後が構造調整対象として手術台にのぼる見通しだ。
金融業界によると、債権団は、金融機関からの信用供与が500億ウォンを超える大企業1422社に対する信用リスク基本評価で、434社に不合格判定を下した。細部評価で「C等級」の企業はワークアウト(財務構造改善作業)に入り、「D等級」の企業は市場から退出するための整理作業を行うことになる。この等級判定結果が近く発表されるが、30社前後がCないしDに選定されると観測されている。
構造調整は建設・中小造船企業180余を対象に始まった。1、3月の2度にわたり信用リスク評価を行い、C、D対象企業34社を選定。その後、5月末現在で4社がワークアウト(財務構造改善作業)を卒業、6社が法定管理手続きを申請中であり、18社はワークアウト中。残り6社は経営正常化計画作成などの作業を行っている。また、中小海運会社に対する信用リスク評価を4月末に完了、対象企業は債権団との約定締結などを推進中だ。
そして6月からは構造調整の本丸に入った。45財閥を対象に信用リスク評価作業が行われた結果、11のグループが財務構造に問題ありと判定され、錦湖アシアナ、大洲、大韓電線、東部、東洋、愛敬、ユジン、ハイニックス、GM大宇の9グループが債権団と約定を締結。残り2社のうち、斗山が系列4社の売却を内容とした独自案、熊津も系列15社すべてを持ち株会社に転換するとの対策で応じた。
この中で、特に厳しい状況にあるのが錦湖アシアナ。過去2年間に大宇建設と大韓通運を相次いで買収した後、世界金融危機で資金不足に直面しているからだ。錦湖アシアナは7月末までに大宇建設に対する新たな出資者を募り、資金難の解決を目指すが、それに失敗した場合には、産業銀行主導の20兆ウォン規模の構造調整基金、PEF(プライベート・エクイティ・ファンド)に大宇建設を売却することになる。
問題は、大宇建設がアシアナ航空と共に昨年買収した大韓通運の最大株主であるという点だ。大宇建設売却という事態になれば、大韓通運の経営権も維持できなくなり、グループの存続基盤が弱体化せざるを得ない。
錦湖アシアナにとって大きな誤算は、06年12月に大宇建設買収のため投資家から3兆5000億ウォンを調達した際、ルックバック・プットオプションを結んだことだ。これは、今年末までに大宇建設の株価が3万5000ウォンを下回れば、投資家に差額を供与するというもの。しかし、現在の株価は1万5000ウォン台であり、このままの株価では投資家に3~4兆ウォンを支払わざるを得なくなる。本業は健全でも買収戦略で大きな痛手を負った形だ。
債権団はまた、大企業に次いで信用供与500億ウォン未満の中小企業に対しても信用リスク調査を経て構造調整を実施する。
今回の構造調整が失敗すれば、大企業の拡張・過剰投資が再燃され、潜在的不良要因が潜在することで、不良企業を量産する恐れがある。専門家の間で、GMやクライスラーを他山の石としなければならないと指摘されている。