リーマン・ショックから15日で1年を迎えた。米国発の金融危機は瞬く間に広がり、「100年に1度」といわれるほどの世界同時不況に見舞われたが、なんとか最悪期は脱したかに見える。今春のG20(主要20カ国・地域)首脳会議で、各国が総額5兆㌦の財政支出に合意するなど、この間の破格的な金融・財政政策のおかげだ。そんな中で、韓国経済はマイナスに陥った成長率がプラスに転じるなど、劇的に危機を克服している。株価も金融危機以前の水準を回復、サムスン電子や現代自動車が海外シェアを拡大するなど企業活力も旺盛だ。だが、外部の環境変化の影響を受けやすい韓国経済の今後は必ずしも楽観できない。「二番底」が懸念される世界経済の先行きはなお厳しく、危機再燃の火種がくすぶっているからだ。
経済の現状を最もよく反映するのは株価だ。世界で数兆㌦が蒸発したとされる株式市場で、株価は確実に回復している。「米国の景気後退はすでに終わった」とする最近のバーナンキ・米連邦理事会理事長の発言も好感し、株価を押し上げている。だが、欧米先進国の株価はまだ金融危機以前の水準を下回る。
それに比べ、韓国の総合株価指数(KOSPI)は17日ぶりに15カ月ぶりに1700を突破、リーマン・ショック以前に完全回復した。サムスン系列18社の時価総額総計が16日はじめて200兆ウォンを突破するなど、むしろ活況を呈している。
経済は確かに回復しており、マイナスに陥った成長率が回復、第2四半期(4~6月)には前期比で2・6%のプラス成長をとげた。年率ではまだマイナスだが、下半期(7~12月)に景気がさらに上向き、年率でも1%弱のプラス成長が見込まれるまでになっている。今年1月まで赤字だった経常収支も2月以降は黒字基調にある。大手企業の業績も好転、第3四半期(7~9月)の純益見通しは軒並み高水準が予想されている。格付け機関が韓国の信用度を上向き調整した。
いち早く経済危機克服できた理由はいくつかあるが、韓国内部に問題が山積みだった1997年の通貨危機当時と異なり、今回は危機の震源地が米国など海外で、韓国企業と金融は堅実だった。輸出企業がウォン安による為替効果を得る側面もあった。韓国企業の競争力は相対的に高まり、代表的な輸出商品である液晶の世界シェアは51・7%に拡大した。
経済は回復したが、課題は多い。一例が「雇用なき成長」だ。国内経済に占める消費、投資など内需の比率は2000年8月の86・5%から現在は79・9%へとむしろ低下している。その打開策として内需市場の活性化などが求められている。
さて、今回の金融・経済危機をきっかけに世界経済は大きく枠組みを変えようとしている。最近、ニューノーマル(新しい標準)時代の到来という言われ方がされている。①低成長と高失業②小さな政府から大きな政府へ③消費から貯蓄へ④自由から規制へ⑤欧米からアジア・新興国へ――などをその内容とする。だが、世界経済に占める欧米先進国の力は大きく、その金融・経済政策は世界を揺るがすことはこの1年間経験済みだ。
韓国の金融専門家の1人は、「韓国もそうだが、多くの途上国が何も悪いことをしていないのに、とんだとばっちりを受けた。これが今日のグローバル金融資本主義の本質だ。今また、米国の大手金融機関で高額報酬が問題になるグリード(強欲)が復活している。オバマ大統領が金融規制改革を打ち出しているが、欧米の金融先進国は責任を痛感してほしい」と指摘した。
貿易依存が90%を超す韓国経済の進路を考える上で、このような流れをどう捉えて対応するかが問われよう。経済体質を強化し、政治と社会システムの健全化がなによりも大事だろう。