原油が一滴も出ない韓国。原油高騰などエネルギー危機に備え政府は、海外油田開発を進めてきたが、李明博大統領は9日の閣議で、「韓国の原油自主開発率を20%程度に引き上げれば、資源危機が訪れても安全装置となり得る」との考えを示した。これは現在4・0%にすぎない自主開発率を20%にまで引き上げようというもので、脱石油政策の一方で原油開発を継続強化することを意味する。最近、イラクでの油田開発の契約が締結されるなど、今後海外油田開発に弾みがつく見通しだ。
原油の自主開発率とは、原油輸入量のうち自給率(国内技術や国内資本が投入された自前の原油)の比率をいう。政府は、財政支援や資源国との協力機構をつくるなどの支援を通じて自主開発率を2013年には15%にまで引き上げる計画だ。
特に、世界第3位の原油埋蔵量(1150億バレル)を誇るイランでの石油開発に期待を寄せている。すでに昨年2月、李大統領はイラクのタラバニ大統領と青瓦台で会談し、油田開発と社会資本(SOC)建設を連係させた総額35億5000万㌦規模の事業に合意し、イラク南部の油田開発権を取得した。韓国が中東で原油生産鉱区を確保するのは、今回が初めて。
韓国は、イラクが進めている1000億㌦規模の戦後復興事業に積極的に参加している。先月には崔炅煥(チェ・ギョンファン)・産業資源部長官を団長とする官民の大型使節団が同国を訪問、イラク南部のジュベイル・バスラ油田開発の進め方についても協議を行った。
韓国の海外油田開発は2度にわたるオイルショックの教訓を経て推進され、06年に国家エネルギー委員会が発足。翌年には関連予算を3550億ウォンに倍増させたり、財源調達のための油田開発ファンドを立ち上げるなど海外油田開発事業を強化している。現在、韓国石油公社や韓国ガス公社をはじめSKエネルギー、大宇インターナショナル、LG商事など約40社が世界の約100カ所で探査・試掘・生産作業をしている。
だが、この海外油田開発に全く問題がないわけではない。原油開発の場合、試掘に成功する確率は10%台とされるが、試掘に成功して生産を開始しても韓国内に持ち込まれず、生産国周辺で消費されるケースが指摘されている。「収益性」の原則により、輸送費などを考慮にいれると、現地消費の方が企業の採算性にあうというものだ。原油開発は政府支援を受けており、これが国益に叶うのかという論議がある。
また、「脱石油時代の今日、莫大な予算を投じて海外石油開発を強化するのが妥当なのか。政府も代替エネルギーや新エネルギー重視を打ち出している以上、舵を切り替える必要がある」という指摘もなされている。しかし、08年のような原油高騰が起こらない保証はないだけに、「備えあれば憂いなし」でもある。海外原油開発の問題点を補完し、円滑な推進が必要なようだ。