韓国銀行は、今年の経済成長率見通しを5・2%に拡大修正した。景気回復の勢いを受け、昨年12月に予想した4・6%を0・6ポイント引き上げたもので、政府の予想値5・0%よりも高く、GDP(国内総生産)規模は6兆ウォン増えることになる。成長率の上方修正はKDI(韓国開発研究院)も来月に予定しており、外国系金融機関には6%台の予想も出ている。 昨年0・2%成長に急降下した韓国経済が、世界経済危機以前の水準に回復する可能性が高くなっているが、楽観的すぎるとの見方もある。
今回の5%を超える成長見通しは、4年ぶりに高い水準だ。元来、韓銀の成長展望はやや保守的で政府の予想値より低いのが通常だ。それが今回、政府予想値を上回る形で真っ先に拡大修正した。国際派で政府との協調色が強い金仲秀(キム・チュンス)・韓銀新総裁就任直後ということもあって関心が集まっている。
韓銀が成長率を引き上げた根拠は、まず世界経済の回復がある。今年の世界経済は3・5%成長し、世界貿易も4・5%増える回復過程にあり、世界経済が回復すれば、貿易依存度の高い韓国経済も成長軌道に乗るという論理だ。輸出は11・9%増に予想値を引き上げている。
また、昨年マイナス9%を記録した設備投資は11・4%から13・4%に、民間消費も3・6%から4・0%にそれぞれ予想値を引き上げた。
一方で国内外に不確実性も多い。まず1年7カ月ぶりの最高値を記録したウォン高が輸出戦線にどう影響するか懸念される。原資材価格の上昇も気になる動きだ。雇用問題も深刻で、最近実施されたソウル公務員採用試験は150倍を超える狭き門となった。
LG経済研究所は「世界経済は回復しているが、国内では雇用不振、家計負債、海外での為替レートなどの影響を受けざるを得ない」として楽観できないとの見方を示している。
今回の成長率の上方修正を受け、金利引き上げが主要政策手段となる「出口戦略」をめぐる論議が再び活発化している。
政府は出口戦略について時期尚早との立場だ。韓銀も今回の修正値で消費者物価は2・8%からむしろ2・6%に下がると予想、「成長幅は大きくなるが、物価が安定するため、まだ出口戦略をとる時ではない」と政府に同調している。
李成太(イ・ソンテ)・前総裁時代には、「4%台後半から5%水準の成長率に2%の基準金利はあまりにも低い」として、金利引き上げが時間の問題と見られていたが、先週の会議でも、金利は14カ月連続で2%に凍結された。これは、成長に重きを置いた通貨政策をとることを示唆している。
これに対して、「経済が回復すれば、市場に信号を送るのが当然だ。経済危機時に断行した各種非常措置を適時に解除しなければならない。これを遅らせるほどインフレや資産バブルの副作用が大きくなる」という警戒の声も出ている。
野村証券のクォン・ヨンソン首席エコノミストは、最近の韓国経済に関するレポートで、「現在の韓国は1980年代後半の日本経済と驚くほど似た環境に直面している」と指摘し、韓国銀行が政府・主要国との協調に過度に傾けば、利上げのタイミングを逃し、バブルを膨らませた日本の前轍を踏む可能性もあると警告した。
「出口戦略」をめぐり、今後の対応が注目される。