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2010/03/19

<総合>物価安定より成長重視・韓国銀行総裁に金仲秀氏内定

  • 物価安定より成長重視

    ■プロフィール■ 1947年ソウル生まれ。京畿高、ソウル大経済学科卒業。米ペンシルベニア大経済学博士。KDI院長、韓国租税研究院長、翰林大学総長などを歴任、李大統領の初代青瓦台経済首席秘書官を務めた後、OECD韓国政府代表部大使。

 今月末で任期切れとなる李成太(イ・ソンテ)・韓国銀行総裁の後任に金仲秀(キム・チュンス)OECD(経済協力開発機構)韓国政府代表部大使(62)が内定した。李明博大統領は23日の国務会議で正式任命する。積極財政派とみられる金仲秀氏が韓銀総裁に起用されることで、「出口戦略」を占う金利引き上げは当分据え置かれる公算が強くなった。11月にソウルで開かれるG20首脳会議を控え、国際金融感覚に優れたエコノミストでもある金仲秀氏に「国際金融協力の適任者」として白羽の矢が立ったが、G20財務長官・中央銀行総裁会議のまとめ役としてのリーダーシップも問われることになる。

 金仲秀大使はソウル出身。ソウル大学経済学科を卒業後、米ペンシルベニア大学で経済学博士号を取得した。韓国租税研究院長、韓国開発研究院(KDI)院長などを歴任。現政権発足と同時に青瓦台(大統領府)経済首席秘書官に任命され、「MBノミクス」(李大統領の経済政策)の伝道者となったが、08年6月の米国産牛肉輸入をめぐる問題で青瓦台が全面改編した際に同職を退き、同年8月にOECD大使に起用された。

 朴先圭・青瓦台報道官は会見で、人選の背景について、「金内定者は、学界や官界を経ながら韓国経済全般に対する幅広い識見と経綸を兼ね備えているだけでなく、OECD大使として国際的な経験と眼目も持っている」と説明。「豊富な実務経験を基盤にした合理的な市場主義者との定評がある」として、韓銀の業務遂行において公共性と透明性を確保できると期待を示した。

 青瓦台関係者によると、李大統領は08年の金融危機以降、中央銀行の役割が徐々に変化している世界的な流れを受け、韓銀に新風を吹き込むことができる適任者を選ぶのに苦心してきたという。金仲秀氏起用の背景について同関係者は「金融市場とマクロ経済全体をチェックする中央銀行の安全弁としての役割が強まっている」として、①韓銀の改革を主導できるリーダーシップと専門性②G20首脳会議に合わせて開かれる中央銀行総裁会議などを取りまとめることができる国際的見識を基準に選考、金仲秀氏を起用したと説明。

 金仲秀氏の韓銀総裁内定で、金利引き上げ時期が遅れる見通しだ。

 韓銀は3月の基準金利を現行の年2・00%に据え置き、13カ月連続で凍結している。金利据え置きの背景として、景気先行指数の下落、失業者増大など依然として不安定な経済状況があげられている。

 こうした状況から、韓銀は景気が上半期中に下降する可能性も指摘しているが、物価上昇圧力が高まっているため、基準金利の引き上げは不可避だとの意見も少なくない。同行関係者は、基準金利2・00%への引き下げは経済危機直後に行われた非常措置であり、平常時への「出口戦略」が遅れることの副作用を憂慮する声もあると指摘した。事実、昨年後半から「出口戦略」をめぐる激しい論争があったが、景気を優先する政府の強い意向を受けた新総裁内定で利上げの主張が力を失う形になった。