カナダ・トロントで先週末に開かれたG20(主要20カ国・地域)首脳会議は、2013年までに財政赤字を半減させる目標などを盛り込んだ共同宣言文を採択した。だが、この財政赤字削減を除きほとんどの主要議題で具体的合意が得られず、11月のG20ソウル首脳会議に持ち越す形となった。世界金融危機から2年。景気回復の兆しはみられるが、欧州で財政危機が起こるなど先行きは不透明感が強い。ソウル首脳会議はこの間提起された課題に道筋をつけるデットラインと位置付けられており、議長国・韓国の役割はそれだけ大きくなってきた。特に、韓国が提唱する「グローバル金融安全網の構築」や「南北格差解消のための開発」がソウル首脳会議の議題となることが再確認され、韓国の調整能力が試されることになった。
今回のトロント首脳会議は、南欧発の財政危機に焦点がおかれ、その他の重要議題のほとんどがソウル首脳会議に向けての調整にとどまった。討議結果、各国が財政を健全化する必要性があるということで一致。今後3年以内に各国の財政赤字を半減(先進国では日本を除く)させ、16年まで国家負債の割合を適正な水準に下げるよう財政健全化案を策定
することに合意。
韓国の財政事情はG20の中でも比較的良好だ。韓国も世界金融危機克服のため財政出動を拡大したため、国家債務は08年の308兆ウォンから今年には400兆ウォンに拡大する見通しだ。また昨年の統合財政収支は17兆6000億ウォンに達した。このため、14年までに均衡財政化する政策を進めている。
主要議題がソウルに持ち越される中で、韓国はどんな戦略で臨もうとしているのだろうか。
今回の首脳会議の共同議長国であり、次回のソウル首脳会議開催国の首脳として、李明博大統領は会議閉幕前に「ソウル首脳会議を展望して」と題して特別発言に立ち、ソウルで開かれるG20首脳会議では「グローバル金融安全網」の具体的な成果が出るよう努力すると表明した。
李大統領は、「この問題は急激な資本の流出入で大変な困難を経ている多くの途上国にとって極めて重要であり、ソウル会議では大きな進展を期待する」と強調した。参加各国も金融危機の拡散を防止するため国内、域内、国際的に金融安全網が必要であることで認識を同じくし、ソウル首脳会議向けに具体策の準備を指示した。
李大統領はまた、「金融危機で開発格差はむしろ拡大した」として、「『開発』をソウル首脳会議の重要議題として扱いたい」と強調。「すでに発足したワーキンググループで、民間部門の力量強化と人的資源の開発に重点をおいた具体案を作成する」と付け加えた。参加各首脳も、途上国の成長に重点をおいた具体的な開発プログラムをソウル首脳会議で採択することで一致した。
李大統領は続けて、「最近の景気回復は政府の財政支出により主導されたが、今後は景気回復が持続されるためには民間部門の役割が重要だ」として、ソウル首脳会議の前日の11月11日に世界の優れた企業のCEO(最高経営責任者)100余人が参加し、貿易、投資、金融、グリーン成長、企業の社会的責任などを論議するビジネスサミットを開催すると語った。
ソウル首脳会議を準備する司空壱(サゴン・イル)準備委員長はトロントで会見し、「今首脳会議で確認した議題の約8割はソウルで結論を出すことになっている。今回は各国の意見の隔たりを調整し、向かうべき方向で合意したが、結実を見るのは韓国が開催する11月の首脳会議だ」と説明。「うまくやれば韓国の地位も高められるが、できなければ新興国だからと評価されかねないハイリスク・ハイリターンの国際イベントだ」と強調した。
韓国としては負担が大きくなると同時に、機会も大きくなったといえそうだ。各国の利害が先鋭に対立する議題も調整しなければならないが、円満な合意を導き出せば新たな世界経済秩序の樹立を主導した国家として浮上する機会をつかめる。G8以外の地域で初めて開かれるG20ソウル首脳会議。国際舞台で指導的な調整者の役割を果たせるのか、重要な試金石となろう。トロント会議を受け、そのスタートが切って落とされた。