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2010/10/22

<総合>議長国の韓国・為替安競争防止へ仲裁役に

  • 議長国の韓国・為替安競争防止へ仲裁役に

    ソウル市内に掲げられたG20首脳会議の大型広報パネル。右は広報大使の金妍兒選手

 G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議が22日から古都・慶州(キョンジュ)で始まった。2日間開かれる同会議の最大の焦点は、世界経済を不安定化させている主要国間の通貨安競争。「為替戦争」とも呼ばれているこの問題にどう対処するのか。議長国・韓国は積極的に各国間の調整を求め、仲裁の役割に乗り出す。来月ソウルで開かれるG20首脳会議の最後の準備会議であるだけに具体的な成果が得られるか注目されている。

 尹増鉉(ユン・ジョンヒョン)・企画財政部長官は議長国を代表して、今会議で通貨安競争の回避を強調し、「現状のままではG20の国際協調体制を崩し、世界経済の回復に水を差す」と主要国に強く協調を求める方針だ。すでに政府はこの間、外交チャンネルや主要国を訪問して仲裁を進めてきた。しかし、米中など主要国の為替問題をめぐる論争は激化しているだけに、為替問題に対する各国の隔たりをどれだけ埋められるかが焦点になるとみられる。

 この問題を担当する申斉潤・企画財政部次官補は、「慶州会議は、G20首脳会議を控え最後の会議となるので、為替問題など各国の意見の隔たりを埋めたい」と妥協してもG20首脳会議につなげる何らかの成果をあげたいとしている。

 今回の会議は、金融規制改革や国際金融セーフティーネット構築など多くの重要議題が多いが、為替問題でつまずけばその他議題へも影響を及ぼしかねない。

 この問題は、議長国としての舵取りが重要であり、方向を誤れば大きな失点になりかねない。

 実際、韓国ウォンに対する「人為的介入」批判が日本からなされ物議を呼んだ。菅直人首相が13日、衆議院予算委員会で為替レートと関連して「韓国と中国の責任ある行動」を要求したのに続き、野田佳彦財務相も「韓国ウォンはいつも市場介入している」と批判したものだ。

 これに対して、金翊柱(キム・イクチュ)・企画財政部国際金融局長は同日、中尾武彦・財務省国際局長に電話をかけ、「不適切な発言ではないのか」と抗議。中尾局長は「他国の為替レートには言及しないことを政策としており、二度とそのような発言がないよう努力する」と答えたという。この問題は韓国国会でも問題になり、尹企画財政部長官は19日の国会企画財政委員会による国政監査で、「政府はウォン高の維持や輸出促進のために人為的な外為政策を取ることはしていない」と答えた。また、「為替相場は経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)や市場需給を反映し動くべきものだ。ただ、相場の偏りに伴う急な変動があれば緩和する努力はしていると説明した。

 人為的介入政策をとらないのは、G20の議長国である韓国が、為替操作国とみなされたのではとても仲裁の役割を果たせないからだ。最近、ウォン高が急速に加速しているが、議長国の立場としても安易に介入するようなことはできない。

 むしろ政府は、世界的な通貨安競争が韓国の産業に与える衝撃を考慮し、さまざまな状況に対応した対策を講じている。その一つが中小企業輸出振興策。通貨安競争がこのまま激化すれば世界景気の鈍化による韓国大企業の輸出減は免れない。政府関係者は、「為替安競争の最大の被害者は、韓国のような輸出主導の新興国だ」と指摘。輸出体質の強化が解決策だが、韓国の場合は中小企業の競争力を伸ばすことがカギとなると強調した。

 この為替問題と関連、「世界為替戦争とG20首脳会議」をテーマにしたフォーラムで主題発表した尹暢賢(ユン・チャンヒョン)ソウル市立大学教授は、「為替戦争は国際金融システムの限界と矛盾が一度に現れた結果だ。世界金融危機がまだ終わらない段階で保護貿易主義をもたらす為替戦争になったことを特に警戒しなければならない」と指摘、G20で具体的な解決策と基本的な原則を示すのが重要だと強調した。出席した専門家の多くが、為替安競争を放置すれば世界経済を危機に追いやる危険性が高いと警告した。

 G20は、世界金融危機解決のため設けられた場だ。議長国・韓国は、仲裁役として多方面の役割が求められている。