韓国で年明けから急騰する物価との戦いが始まっている。政府は、物価安定のための総合対策を打ち出し、韓国銀行は金利引き上げのカードを切った。日増しに募る物価不安への懸念を事前に断ち切る狙いがある。だが、牛と豚を200万頭以上殺処分した口蹄疫の被害と寒波も加わり、農畜物価格は依然と高値が続いており、ガソリン価格上昇に歯止めがかからない。物価との戦いは持久戦になりそうだ。
政府は先週末の13日、李明博大統領主宰の国民経済対策会議で「庶民物価の安定に向けた総合対策」を発表した。企画財政部など関係省庁が合同でまとめたもので、財政や税制に制裁、行政指導を含む物価安定のための措置が網羅されている。
対策の内容は、①電気と都市ガス料金を含む17の中央公共料金を上半期(1~6月)まで据え置く②自治体が決める路線バスやタクシー、上下水道、ゴミ袋など11の地方公共料金は、消費者物価上昇率を超えないよう管理する③大学授業料も、国立大学のほとんどは据え置き、私立大学は引き上げが止むを得ない場合は3%未満に抑えるよう指導する④最近首都圏を中心に急騰している伝貰(入居時に払う保証金)や月貰(月々払う家賃)価格対策として、年末までに9万7000戸の小型公共分譲や賃貸住宅を早期に供給し、伝貰・月貰支援規模も6兆8000億ウォンに増やす――などとなっている。
また、石油業界への調査に乗り出した公正取引委員会は、石油会社を訪問し、価格決定と関連した資料を一斉に押さえた。石油業界は、「政府がガソリン価格統制を行った17年前に戻ることだ」と反発している。
政府は18日、企画財政部や知識経済部、大韓石油協会の関係者などが出席した中、「石油価格評価タスクフォース」の初会議を開き、今回の総合対策を受け、石油会社がガソリンスタンドに対し供給している価格が、合理的なのかを検討している。財政部の高官は「石油製品の輸出で世界4位の国内石油業界は、十分原価を下げることができるのに、原価がどのように決まるかに関する資料を出したことがない。原油導入価格やガソリン原価など、全般的な価格決定構造を調べる計画だ」と語った。
韓国石油公社によると、ガソリン平均価格は昨年10月から連日上昇を続けている。昨年10月10日に1㍑=1706・86ウォンが今年1月17日には1825・00ウォンへと100ウォン以上上昇した。
このガソリン価格上昇問題に対して李大統領は「08年に国際原油価格が1バレル当たり140㌦だった時、ガソリン価格は1㍑=2000ウォンだった。今は1バレル=80㌦ほどだが、ガソリンは1800ウォン以上だ。これは常識で考えて少しおかしいと思う」として、ガソリン値下げ検討を指示。
口蹄疫被害拡大による物価への影響も大きい。農林水産食品部の関係者は「口蹄疫のため全国で200万頭近い豚が殺処分され、その影響で豚肉全体の20%近くが減少した」と説明した。農水産物流通公社によると、18日現在、豚バラ肉500㌘の価格は平均8657ウォンで、1週間前と比べ、1094ウォンも高くなっている。牛肉の場合はこれまで殺処分された数が13万頭にとどまっているため、豚肉に比べ価格は安定しているという。
家賃問題も物価に大きな影を落としている。李大統領は、家賃の上昇などで1人世帯の生活が苦しくなっているとの報告を受け、懸念を示した。
一方、韓国銀行は13日から基準金利を0・25%引き上げたが、物価動向に引き続き警戒している。金仲秀(キム・チュンス)総裁は19日の講演でインフレ圧力と関連、「相当に困難な状況だ」と語った。国際原資材価格の上昇、米国の追加金融緩和など不安要因が大きいからだ。昨年12月の輸入物価上昇率は12・7%を記録、同月の生産者物価も5・3%の高い上昇率を記録した。これらの物価が消費者物価に反映されるのは数カ月後だが、1月の消費者物価上昇率は抑制目標の3・5%を上回る4%を超える見通しだ。
政府は、物価関連部署が非常体制で物価動向を点検、万全の備えをとるとしているが、ガソリン価格など市場価格に政府が過度に介入することに批判の声もでている。今後の物価との戦いは予断が許されない。