欧州3カ国歴訪中の李明博大統領は9日、最初の訪問国ドイツのベルリンで、ウルフ大統領と会談を行い、有望な戦略産業分野での協力強化に合意した。また、メルケル首相との首脳会談では、福島第1原子力発電所事故に伴う原子力政策についても論議、新・再生エネルギー開発で協力することで一致した。今回のドイツ、デンマーク、フランスの3カ国歴訪は、「グリーン外交」ともいわれ、環境問題の協力が大きなテーマになっている。
李大統領はウルフ大統領との会談で、経済問題について突っ込んで協議。両国間の貿易・投資を拡大する際、特に部品・素材分野の協力を強化し、電気自動車、グリーン成長、再生エネルギーなど有望戦略産業分野での協力が政府と民間分野でともに拡大できるよう緊密に協力することで合意した。
ドイツはEU(欧州連合)の中で、韓国最大の貿易パートナー。昨年の両国間貿易は250億㌦に達する。輸出は前年比21・3%増の107億㌦、輸入も16・3%増の143億㌦で、ともに高い伸長をとげた。また、ドイツの対韓投資はEUの中で3番目に多く、昨年は92億4000万㌦に達した。
メルケル首相との首脳会談では、両国の共同関心事を中心に協議したが、原子力政策の協力についても話し合った。ドイツは原発廃棄の方向に再び動いており、継続推進する韓国とは状況が異なる。だが、両国とも再生エネルギー開発に力を入れており、会談ではバイオ、風力などの再生エネルギー協力で一致。
会談後の共同記者会見で、李大統領は「韓国は現在21基が稼動中で、7基を新設中だ」と説明、「日本とは地質的に与件が異なる。韓国は後発国であり、安全基準がはるかに強化されている。運転実績をみれば、世界で最も事故がない。福島原発事故は安全性をさらに強化・補強する上で参考になる」と強調した。
メルケル首相は、「原発の使用方法で論議した。韓国とドイツが協力プロジェクトを実施することもありえる。何よりも安全性が重要だが、韓国は厳格な安全基準審査をしており、日本の教訓を実行するだろう」と語った。
この共同会見ではまた、李大統領が、北朝鮮が非核化に合意すれば、来春ソウルで開催される核安全保障サミットに金正日総書記を招く用意があると明らかにし、注目を集めた。核安全保障サミットは、オバマ米大統領が「核のない世界」を提唱したことを受けて始まった。昨年4月にワシントンで第1回サミットが開かれ、来年3月26日からソウルで開催される第2回サミットには約50カ国・地域の首脳らが出席する見込みだ。李大統領は、このサミットに金総書記の参加が実現すれば、北朝鮮は明るい未来の保障を受けるチャンスになると話した。
翌10日、ベルリン訪問を終え、フランクフルトに移動した李大統領は、ドイツ主要企業の経営者らとの懇談会を開いた。
李大統領はこの席で、アジア諸国で初めてEUとFTAを結んだ韓国を戦略拠点として活用し、中国やASEAN(東南アジア諸国連合)、インドなどに進出すれば有利だとアピール。部品・素材、グリーン産業分野での対韓国投資に率先してほしいと呼びかけた。
李大統領は、11日にはデンマークを国賓として訪問。韓国が設立したグローバル・グリーン成長研究所(GGGI)の初の海外支社となるコペンハーゲン支社の開所式に出席した。12日にラスムセン首相と首脳会談を行い、グリーン成長分野で両国が同盟関係を結んだと宣言。具体的な協力内容を盛ったMOU(了解覚書)を締結。
13日にはパリでフランスのサルコジ大統領と首脳会談し、両国の協力、貿易・投資拡大などについて意見を交換する。また、OECD(経済協力開発機構)のグリア事務総長、国連教育科学文化機関のボコバ事務総長とも面談し、15日に帰国する。7泊8日の欧州歴訪の成果が期待される。