米国発の金融不安が世界経済を襲っている。韓国経済への影響も大きく、株価暴落とウォン下落を招き、経済の先行き懸念が高まっている。ソウル株式市場でKOSPI(総合株価指数)は、2000を大きく割り込み、1800割れ目前まで進んだ。9日までの6営業日の間に370ポイント(17・08%)急落し、時価総額で209兆ウォン消失した。株を売った外国人のドル買い需要で為替相場は、1㌦=1080ウォン台までウォン安が進み、4%も切り下がった。世界の為替相場でドル安が進行しているのとは逆に、ソウルではウォン安ドル高が進む事態に「第2の通貨危機」を懸念する声も出ている。
KOSPIは先週の2日から下がり始め、週明けの8日には一時1800まで急落。下げ幅が史上最大の143・75ポイントも下落したため市場はパニックに陥り、取引は一時強制的に売買が中止された。10日の終値は1806・24に戻した。
一方の為替相場は9日、株価暴落も受けたドル買い需要で1㌦=1082・50ウォンで取引を終えた。前日比15・10ウォンのウォン安で、6月28日以来の最安値。10日の終値はややウォン高の1080・00ウォンに戻した。
韓国の金融市場が大きく揺り動かされているのは、市場がほぼ完全に開放されていることに加え、貿易依存度が極めて高く、世界経済の動向に敏感に反応せざるを得ないからだ。
政府と関係機関は、金融市場の急変を受けて、対策を急いだ。
金融委員会は9日、臨時金融委員会を開き、資本市場不安の元凶視されている空売りを10日から3カ月間禁止する措置をとった。また、金融機関に対して、万一に備え、外貨調達資金に余裕を持たせるよう指導している。証券などの金融投資業界も緊急社長団会議を開くなど対策を協議した。
金仲秀(キム・チュンス)・韓国銀行総裁は、国会の企画財政委員会で、「国際金融市場の不安を招いた欧米の経済問題は短期間での解決が難しい。国内金融市場の変動性の急上昇に留意すべき」と指摘。海外リスク要因の影響で成長の不確実性は高まったとの見方を示した。
金滉植(キム・ファンシク)・国務総理は同日の閣議で「外部からの衝撃への対応力を強化するため、韓国経済の体質を根本的に変える努力を続けるべきだ」と経済体質にまで踏み込んだ。
李明博大統領は8日、米国の長期国債格付けの引き下げが韓国経済と金融市場に及ぼす影響を点検するための会議を緊急招集。世界経済・金融への悪影響に警戒感が高まっている現状について「全世界にとってのサバイバルゲーム」と表現し、国際協力の重要性を強調した。
今回の危機は、米国の不況の可能性と欧州の財政危機の広がりに対する懸念が背景にあり、予見可能だった。直接の震源は米国の債務問題で、S&Pが米国債の格付けを1ランク下げたことが火に油を注いだ形になった。これは、戦後世界経済の守護神だった基軸通貨ドルの失墜を意味し、「資本主義の終焉だ」という声まであがった。しかも、3年前の世界金融危機は各国の大規模な財政出動で乗り切ったが、皮肉にも今回はその財政負担のつけが回ってきており、前回のように財政出動の余地はない。このため財政機能を重視した「ケインズ理論は破綻した」という指摘まで出ている。
李明博大統領は10日、「金融市場の危機管理に向けた非常対策」の緊急会議を招集し、世界経済の危機状況に対応し、来年度の予算編成を全面再検討するよう指示した。