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2012/03/30

<総合>「核のない世界」へ核物質削減

  • 「核のない世界」へ核物質削減

    核安保サミットに出席した53カ国首脳・代表と4国際機関代表

 ソウルで開かれている第2回核安全保障サミットが27日、2日間の協議を終え共同声明を採択して閉幕した。今回の核サミットには53カ国の首脳及び首脳級代表と国連など4つの国際機関の代表が参加、世界の主要国トップが勢揃いする韓国最大の国際会議となった。各国首脳は核物質の管理強化と原子力施設の安全対策強化で一致。共同声明で、核兵器の原料になる高濃縮ウランの削減計画を各国に求めた。南北分断国家の韓国が、「核のない世界」に向けて大きなアピールの場となった。

 議長を務める李明博大統領は、開幕あいさつで「核兵器と核テロの無い世界を実現するまでの道のりは遠く険しい」と述べ、核のない世界へ向けて「夢の実現」を前倒しできる議論を訴えた。

 2日間の論議を経て、核サミットに出席した首脳らは、満場一致で共同声明を採択。焦点の核物質削減について「高濃縮ウランの使用を最小化する自発的な措置を、来年末までに発表することを奨励する」と明記した。

 共同声明には盛り込めなかった医療用・研究用に広く用いられている高濃縮ウランを低濃縮ウランに転換するというコンセンサス(合意)もでき上がった。

 実際、韓国、米国、フランス、ベルギーの4カ国は、韓国が開発した技術を活用して、研究用原子炉で使われる高濃縮燃料を低濃縮燃料に代替する共同事業計画を発表。この技術が商用化されれば、研究用原子炉等に使われる高濃縮ウランを低濃縮ウランに代替できるようになる。

 高濃縮ウランは、テロ集団の手に渡れば恐るべき武器として悪用される可能性が高いが、低濃縮ウランなら危険性は極めて低い。このような措置を通じて核テロを防ぐというものだ。

 各首脳はまた、福島第1原発事故で反原発機運が高まる中、原子力の平和的利用権を確認した。共同声明は前文で、「われわれは核安保を強化するための措置が原子力を平和的な目的に開発し、利用する国家の権利を損なわないことを再確認する」と謳っている。その上で、福島第1原発事故以降をにらみ、「原子力の安全と核安全問題を一貫性ある方法で扱えるよう努力する」ことを明記した。

 共同声明はまた、核物質防護条約の国内承認手続きを加速化し、14年までに同条約の改正案が発効されるよう求めた。

 改正核物質防護条約は、核物質が不純な勢力によって奪取あるいは密売されることを阻止するための、最も実効的な対策とされる。しかし、05年に条約改正案が採択されてから7年が過ぎても、批准国は発効に必要な97カ国に遠く及ばず、現時点で批准したのは55カ国にとどまっている。

 IAEA(国際原子力機関)を国際核安保体制の中心と認め、核セキュリティー基金への寄与を自発的に増大させることでも一致した。

◆視 点◆
 今回の核安保サミットの成果については、高濃縮ウラン削減の実効性に疑問も投げかけられている。核物質の使用制限問題を最もよく知るIAEAに強制する権限がなく、専門家らは「自発的な措置」に悲観的な反応を示した。だが、核安保を宣言のレベルから実践段階に間違いなく発展させた。

 共同声明の合意は法的拘束力がないが、各国首脳が自発的に合意したものであり、実行される可能性が高い。ソウル会議を通じて対策がより具体化されることにより核テロ防止という目標に一歩近づくことになった。核物質を削減したり廃棄して、削減と廃棄を約束する国が増えている点も意味ある進展だろう。

 議長を務めた李大統領に対しては、2つの大きな成果を挙げたと評価されている。核安保分野での韓国の国際的地位を向上させるとともに、ロケットの発射予告をしている北朝鮮に対し、国際的な「包囲網」を敷いた点だ。

 特に、韓国が昨年のG20(主要20カ国・地域)首脳会議に続き国際安保分野で世界最大の首脳会議を主催し、成功裏に終えたことは韓国の国際的地位と外交力をさらに高めた。


 ◆世界の核物質量 全世界には核兵器12万6000個分の高濃縮ウラン1600㌧とプラトニウム500㌧がある。また、毎年200~250件の核・放射性物質の盗難事件などが起き、その60%が行方不明だ。高濃縮ウランだと25㌔、プルトニウムなら8㌔で核兵器1個の製造が可能とされる。