韓国の総選挙が11日に迫った。選挙戦は「経済民主化」が最大の争点に浮上している。李明博政権下で拡大した格差拡大を是正し、一部の経済勢力に偏らない公正な社会を実現しようというもので、与野党とも公約に掲げている。また、与野党とも福祉公約を連発し、「庶民の味方」を競い合っているが、ポピュリズムを懸念する声も出ている。
今回の総選挙は、300議席(地域区246、比例区54)を1116人(地域区928人、比例区188人)で争う。競争率3・7倍の狭き門だ。
結果は、12月の大統領選に大きな影響を及ぼすだけに、第1党の座をかけて与野党の必死の攻防が続いている。野党は「李明博政権と与党・セヌリ党に対する審判」と位置づけ、対決色を強めている。
選挙戦は、先月29日スタート。党を刷新、2月にハンナラ党から党名を変えた与党・セヌリ党の朴槿恵(パク・クネ)・非常対策委員長は、全国の主要激戦地をめぐり、生活に密着した福祉の充実を強調するなど支持を訴えている。最大野党・民主統合党の韓明淑(ハン・ミョンスク)代表や大統領候補の1人と目されている文在寅(ムン・ジェイン)最高顧問らは、激しい政府・与党批判を繰り広げている。
勝負の鍵を握るのは、全地域区の45・5%を占める首都圏の112議席。野党陣営は、民主統合党と革新色が強い統合進歩党などが、地域区候補者の一本化を通じた野党圏連帯で与野逆転を狙っている。4年前の選挙で過半数を獲得したセヌリ党(165議席)は現有議席の維持がほぼ絶望的な情勢。第一党をめざし、120~140議席の争いとの見方もある。
選挙戦の最大争点は「経済民主化」で、「特定の経済勢力が何でも好き勝手にすることは許されない。貪欲な行為で、他人の生存基盤を奪ってはならない」との主張が力を得ている。
背景に、企業フレンドリーを掲げた「経済大統領」への失望がある。政策目標の7%成長・国民所得4万㌦の達成はおろか、非正規職が700万人に増えるなど格差が拡大した。サムスンや現代自動車など大企業の躍進が続き、輸出が増大したが、庶民はその恩恵が実感できずにいる。むしろ、物価高で生活は苦しくなり、「財閥や大企業を優遇する金持ちの味方」と反感を強めている。
セヌリ党と統合民主党の二大政党がともに経済民主化の実現を掲げているが、方法論で違いがある。分配の公正化を重視するセヌリ党に対し、民主党は直接規制強化を打ち出している。
セヌリ党の政策は、政府の役割を強化し、資本所得に対する課税強化、大企業集団の内部取引などに対する処罰強化に力点をおいている。
これに対して民主統合党は、出資総額制限制の復活と循環出資の禁止、金融・産業資本の分離強化、企業家の横領と背任罪の赦免除外などが主な内容だ。統合進歩党は、財閥規制法の制定と30大企業集団を3000の専門企業に転換させる「財閥解体」を明確にしている。
また、福祉も経済民主化と並んで大きな争点で、無償保育や無償給食の拡大、高校授業料無償化や大学授業料半額化などの公約が相次いでいる。だが、これに対して財政的な裏づけを懸念する声も高くなっている。セヌリ党と最大野党の民主統合党が発表した福祉公約は266件にのぼる。政府の合同福祉特別チームによると、これらの福祉公約をすべて執行するためには、5年間に少なくとも268兆ウォンの追加予算が必要になるという。
3月に発効した韓米FTA(自由貿易協定)問題も重要争点になっており、FTA再交渉・破棄を訴えている野党連合に対して、セヌリ党は真っ向から反対している。