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2012/04/20

<総合>在米韓国人のジム・ヨン・キム氏、世界銀行総裁に選出

  • 在米韓国人のジム・ヨン・キム氏、世界銀行総裁に選出

           世界銀行総裁に選出され喜ぶジム・ヨン・キム氏

 世界銀行の総裁に初めてアジア系の在米韓国人、米ダートマス大学長のジム・ヨン・キム(金墉)氏(52)が選出された。世界銀行は、16日の理事会でキム氏がナイジェリア財務相のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏を抑え、次期総裁に選ばれたと発表した。キム氏は6月末に退任するゼーリック総裁の後任として、7月1日から5年間、世界銀行のトップを務める。キム新総裁は、世界の貧困根絶を最優先に掲げ、韓国の成長経験を生かす考えを明らかにしている。

 世銀総裁は、米国が指名する候補者の就任が慣例となっており、1944年の発足以来、歴代総裁は白人の米国人だった。キム氏は韓国生まれで、5歳のときに渡米し米国籍を取得した。白人以外で初の総裁になった点で特記される。

 だが、より注目すべきは、キム氏が総裁になることで、世銀の新たな挑戦が始まるという点だ。世銀は声明で、「最終候補はそれぞれ異なる国から支持を受けた。これは新総裁の役割と世銀の進むべき方向に対する協議を活性化させた」と評価した。

 キム氏は世銀理事会に送った声明で、「貧しい人々により多くの機会を提供できるように努力する」と強調した。また「世銀が全ての児童のための正義と抱擁、尊厳性を謳歌できる世の中をつくるため努力しよう」と呼びかけた。

 キム総裁に対しては、経済専門家でないことに対して不安視する声があり、「反成長主義」とのレッテルを貼る人もいる。反成長主義の烙印は、彼の著書「成長のための死」から来ている。同書でキム氏は「いかなる犠牲を払っても成長のために進まなければならないということは、より多くの人々が貧困の奈落に落ちることを意味する」と指摘している。
 
 だが、最近訪韓したキム氏と会談した朴宰完(パク・チェワン)・企画財政部長官は、「キム総裁は貧しさを解消する最も効果的な方法は成長と考える親成長主義者だ」と評した。

 世銀の業務は多様だ。経済開発、貧困層支援、腐敗防止、海洋開発、水開発、女性、エネルギー、環境、持続可能な発展、保健、教育など扱う領域は数多い。

 世銀関係者は「キム新総裁が既存の総裁のように経済学者ではない、という点に多くの人が期待をかけている理由もまさにここにある」として、「医師出身で人文学にも関心が高いキム氏こそ世銀の機能を多様化し、拡大する最適者だ」と語った。

 実際、キム氏は20年以上にわたり開発途上国の疾病退治に献身してきた。ハーバード大学の教授らと医療奉仕団PIH(パートナーズ・イン・ヘルス)を結成、ハイチだけでも10年以上にわたり結核患者10万人以上を治療した。PIHで25年間働きながら、WHOと共同で全世界40余カ国でこの治療プログラムを提供した。これらの功績でWHOエイズ局長に抜擢され、3年間にわたりエイズ患者100万人以上を救った。米ダートマス大学長に任命されたのも、この功績が評価されたからだ。

 また、キム氏は韓国の経済開発の経験を途上国の貧困問題解決に生かしたい考えだ。今月2日、李明博大統領と面談した席で「世銀総裁になれば、韓国の成長経験を土台に、人々に対する投資が途上国の開発の核心だという考えで働きたい」と語った。


■プロフィール 1959年ソウル生まれ。5歳で米国に移民。ブラウン大学卒業。ハーバード大学医学博士・人類学博士。医師として中南米などの貧困地域でエイズ撲滅活動や公衆衛生の普及などに取り組む。ハーバード大学の教授やWHO(世界保健機関)の局長などを歴任。09年ダートマス大学長に選出。