ここから本文です

2012/06/08

<総合>韓国・世界経済危機に備え非常体制

  • 韓国・世界経済危機に備え非常体制

    急落した株価。ソウル市場で韓国総合株価指数は、1800を割り込んだ

 世界経済の先行きが不安だ。ユーロ圏の債務危機が世界的な不況につながる兆しを見せている。欧州経済の不振が米中をはじめ世界各国へと連鎖しているからだ。韓国経済もすでに輸出が3カ月連続して減少するなど深刻な影響を受けている。政府は、4年前のリーマン・ショック並みの世界的な経済危機が再燃する可能性に備え、非常体制に突入した。

 週明けの4日、アジアの証券市場は取引開始とともに株価が一斉に急落した。ソウル証券市場ではKOSPI(韓国総合株価指数)が先週末より51・38ポイント下落し、1783・13で取引を終えた。1800台が崩壊してしまった。

 金錫東(キム・ソクトン)・金融委員長は、「欧州の財政危機は1929年の大恐慌以来、最も大きな経済ショックだ」と診断した。企画財政部も5月の経済動向報告書で、「世界経済の不安で韓国金融市場の変動性が拡大している」と憂慮。証券市場は外国人投資家の売り越しが続き、4月より7・0%下落し、ドルに対するウォン相場も5月に入り50・3ウォン下落した。

 専門家らは、今回の危機が短期間に解決されるのは困難だと見ている。特に、金融市場にとどまらず、実体経済に影響を及ぼしていることを懸念している。

 米国、欧州、中国という韓国の3大輸出市場が軒並み揺らぎ、輸出は3カ月連続で減少し、韓国経済は翼を失った格好だ。内需も不振で、これまで好況だった百貨店の売上高も08年以来初めて減少に転じ、安売りセールが相次いでいる。

 実体経済への影響は企業にも及んでいる。上場企業の第1四半期(1~3月)の業績は、大半が不振だった。10社中4社が赤字経営に陥り、営業利益は前年同期比15・6%減少した。また、家計債務の負担増大で消費余力をなくした消費者が経済を牽引できる状況にない。

 このような事態を前にして、政府は対応を迫られている。李明博大統領は5日の閣議で「今の状況は決して簡単なことではない。下半期(7~12月)の成長が萎縮する可能性がある」と経済状況の深刻性を警告し、経済チームに徹底した備えを指示した。 当初、下半期に経済が上向くと予想されていたが、欧州債務危機の再燃で下半期も低成長が続くのは必至となった。

 朴宰完(パク・チェワン)・企画財政部長官は会議直後、政府果川庁舎で「実体および資金市場点検会議」を開き、「常時点検体制を同日から『集中モニタリング体制』に強化する」と発表した。また、韓国銀行も、朴元植(パク・ウォンシク)副総裁の主宰で「通貨金融対策チーム」非常会議を開き、国際市場の状況を点検し、万一の事態に備えて主要国の中央銀行との協力を強化する方針だ。

 企画財政部の関係者は「これまでニュースや市況のみをモニタリングしてきたが、今後は政府が直接、外国政府と接触し、内部事情を把握していく。集中モニタリング体制では、危機発生時に誰がどんな措置をどのレベルで取るかを事前に把握するよう努めることになる」と述べた。

 政府が現在想定している最悪のシナリオは、ギリシャがユーロ圏から何の対策もなく離脱し、危機がスペインなどに飛び火するケースだ。企画財政部は、そうなった場合の衝撃はリーマン・ショックに並ぶものになるとみて、積極的な為替介入、金融機関に対する外貨流動性支援などを検討している。

 特に、今回の危機が重大なのは、世界経済のどこにも頼れない状況にある点だ。輸出で危機を突破してきた過去とは異なり、今回は欧米はもちろん、中国など新興の経済大国まで揺らいでいるからだ。

 このため、政府は今年の経済成長率を当初の3・7%から3・5%に引き下げる方針だが、3%台前半まで低下する可能性も想定しなければならない状況だ。成長鈍化による税収不足で追加補正予算も避けられなくなり、財政健全性の悪化も余儀なくされる。

 政府は対策としてまず、各種基金から5~6兆ウォンの財源を確保し、景気浮揚など緊急対策の検討に入った。

 中小企業、ベンチャー創業基金などから1兆ウォン前後の基金を増額するとともに、毎年10兆ウォン以上生じる余剰予算の半分を景気浮揚に充てるというものだ。

 97年の通貨危機当時88億㌦にすぎなかった外貨準備高は現在3000億㌦を超えており、企業の基礎体力も強化されている。

 だが、韓国は対外依存度が極めて高く、世界経済の影響をモロに受けざるを得ない。企画財政部は、雇用創出など暮らしの安定に力を入れる一方、投資の活性化や経済体質の改善に努める方針だが、構造的に経済体質を強化する課題も問われている。