韓国で60歳定年制が義務化される。国会環境労働委員会の法案審査小委員会が23日、公共・民間部門での60歳定年制を段階的に義務化することを骨子とした「雇用上の年齢差別禁止および高齢者雇用促進に関する法律」の改正案を通過させた。与野党は、今月中の本会議で成立させる予定だ。現行法の定年は55歳。今回の改正で、勧告条項となっている60歳定年制を義務条項と規定した。すべての事業所を対象に2016年から段階的に施行する。
改正案によると、公共機関や地方の公社・公団、従業員300人以上の企業は3年後の2016年1月から60歳定年制を実施しなければならない。従業員300人未満の企業や政府・地方自治体は17年1月から実施を義務付けている。
与野党は、定年延長と同時に「賃金ピーク制」の導入を含む賃金体系の見直しにも合意した。賃金ピーク制とはある一定の年齢以降、賃金削減するという制度だ。定年延長による企業の負担に配慮したものだ。しかし与野党は賃金ピーク制に合意はしたが、改正案に明記することはできなかった。賃金ピーク制を強制するかどうかで与野党の意見が食い違ったからだ。
60歳定年制の義務化は、昨年12月の大統領選挙で与野党候補がともに公約として掲げていた。今国会で成立する見込みとなったが、実施に伴い深刻な問題も提起されている。まず、厳しい就職難にある青年層への影響。
雇用労働部によると、50~59歳の労働者は126万人(11年)に達する。現在の韓国企業の定年は平均で58・4歳であり、彼らの定年が延長されることで148万人にのぼる15~29歳の青年失業者の就職の道がさらに厳しくなると予想される。
第2に、企業負担の過重がある。韓国労働研究院によると、韓国では金属20年以上で、給与は新入社員の2倍以上になる。欧米企業に比べかなり高い水準だ。このため、賃金ピーク制を推進することになったが、労働界では賃下げに強く反発している。また賃金ピーク制を導入したが、「高齢者の生産性を低下させている」と廃止した企業もある。
300人以上の韓国企業は現在1881社にのぼるが、60歳以上定年制を実施している企業は23・3%にすぎない。37・6%が55歳定年制を採用している。これは、日本が98年に60歳定年制を導入した当時、すでに60歳以上定年制の比率が93・3%だったのと大きな違いだ。経済界は3年内に実施するには準備期間が短いと心配している。
定年制の延長は時代の流れであり、「企業の高齢者雇用維持に対する認識を変え、今後の労働力不足に対する対応になる」(労働界)という意義がある。問題は、低成長のもと解決すべきことが多くあり、スムーズな移行のための努力が強く求められている。