韓国は、海外資源開発に力を入れているが、アフリカのマダガスカル共和国で進めている大規模なニッケル鉱山開発事業が成功し、生産されたニッケルが初めて国内に搬入された。事業開始から7年目のことだ。この事業は韓国鉱物資源公社や大宇インターナショナルなどの韓国コンソーシアムと日本、カナダ企業が共同参加した国際的なプロジェクト。2006年に合弁契約を結び、翌07年からプラントを着工し、昨年9月から商業生産を始めた。現在稼働率は60%台だが、フル稼働する来年には韓国はニッケル需要の25%を充当できる見通しだ。
知識経済部と関係業界によると、韓日加3カ国企業がニッケル鉱山開発を進めているアンバトビーは、マダガスカルの首都アンタナナリボの東方約80㌔㍍の標高約900㍍の高地に位置する。
ニューカレドニアのSLN鉱山、インドネシアのソロアコ鉱山と並ぶ世界3大ニッケル鉱山といわれ、推定埋蔵量は1億7000万㌧に達する。鉱床の層厚は平均約40㍍、最大約100㍍に及び、極めて厚い点が特徴だ。
資本出資比率は、韓国コンソーシアム27・5%、日本の住友商事27・5%、カナダのシェリック40%、カナダSNC5%となっており、韓国はここで年間3万㌧の購買権を確保。これにより、全世界のニッケル生産量の10%を消費している韓国鉄鋼産業をはじめ製造業の競争力向上効果が期待される。
今回初めて搬入された量は40㌧。特殊合金をつくるポスコに全量販売される予定だ。業界関係者は「世界的な埋蔵量を持つアンバトビー鉱山から直接搬入することも意味が大きい」と語った。今回搬入したニッケルは硫化物形態のニッケル、コバルトを精錬して作った最終生産物(ブリゲット)だ。
ニッケルを使うステンレス鋼、特殊合金市場では、世界の鉄鋼メーカーが熾烈な競争を繰り広げており、ニッケル需要も世界的に増加傾向にある。昨年には、世界的な景気沈滞で合金需要が減り、ニッケル価格も10%ほど下落したが、景気が回復する今年は価格が大きく反騰する可能性が高いとされている。
韓国は、中国、日本、米国に次ぐ世界第4位のニッケル消費国だ。年間使用する12万㌧のニッケルはほとんど輸入に依存している。フル稼働する来年にはアンバトビー鉱山で最大6万㌧のニッケルを生産できるが、韓国コンソーシアムは半分の3万㌧を購買できる権利を持っている。年間国内需要量の25%に当たる規模だ。
ポスコ関係者は「世界ニッケル使用は来年以降、毎年5~6%の成長が見込める。国内はもとより海外でも製鉄所建設を積極的に進めている国内鉄鋼メーカーにとってアンバトビー鉱山は大きな援軍になるだろう」と語った。
◆ニッケルとは 原子番号28の金属元素で、レアメタル(希少金属)に属する。光沢があり耐食性が高いため鍍金に用いられるほか、ステンレス鋼や硬貨の原料などにも欠かせない。また、様々な合金に使用され、チタンとニッケルの1対1の合金は最も一般的な形状記憶合金となる。さらに、触媒や二次電池の電極材など用途が幅広い。