1ドル=100円台に突入した急速な円安が韓国産業界に打撃を与えている。すでに価格競争力を失った中小企業に深刻な影響が及んでいるが、世界市場で日本メーカーと競合する自動車業界などでも収益が急速に悪化し始めた。G20(主要20カ国・地域)やG7(主要7カ国)の財務相・中央銀行会議で円安が黙認されたため、円安がさらに進んだ。韓国はどう対応すべきなのか。
ウリ投資証券が100円=1031ウォンの場合の国内主要20業種への影響を分析した結果、電力・ガス、運送、通信サービスの3業種を除く17業種で利益が減ることが分かった。
自動車・鉄鋼・造船・機械など世界市場で日本企業と競争する輸出企業の打撃は避けられない。
蔚山(ウルサン)発展研究院が過去10年間のウォン・円為替レートと現代自動車の輸出台数の相関関係を分析したところ、1%の円安で現代自の輸出は0・96%(約1万台)減ることが明らかになった。
ウリ金融経営研究所の分析によると、円安がさらに進み、1㌦=110円になり、ウォンの対ドルレートが1㌦=1000ウォンのウォン高になれば、韓国の製造業の営業利益は26兆ウォン減ると推定した。現在1㌦=102円、1㌦=1114ウォンであり、全くありえ得ない想定ではない。
すでに自動車業界では、現代自動車が第1四半期(1~3月)に大幅減益となるなど被害が甚大だ。現代経済研究院によると、1㌦=110円を超えれば、鉄鋼、石油化学、機械などで輸出が10%以上減ると分析している。
幸い、最近はドルに対してウォン安に振れているので多少は楽観できる。これは、円安により韓国経済の競争力低下への懸念が高まり、外国為替市場でウォン安に転じたもので、政府はこの流れを維持する方針だ。
問題は、円安攻勢に政府が政策的に対応する方法があまりないという点だ。ウォンと円は直接交換する市場がない。ウォン・円の為替相場はウォンと円の対ドル相場で自動的に決定する。急激なウォン高・円安になっても、政府がこれといった対策を取れないのはそのためだ。為替当局者は「ウォン・円相場を調整するためには、ウォン・ドル市場、ドル・円市場に同時に介入しなければならないが、それは不可能だ」と述べた。
また、国際協調で円安に歯止めをかけることが期待されたが、G20に続き、G7でも「デフレからの脱出策」という免罪符を受け、韓国は円安阻止に失敗した。
玄旿錫(ヒョン・オソク)・経済副総理兼企画財政部長官は、先月のG20財務相・中央銀行総裁会議で、日本の金融緩和政策が及ぼす副作用について言及したが、「中国やブラジル、インドなど韓国と利害が一致する国をまとめることができないまま不満ばかりを口にしたため、他国と共同の歩調を取れなかった」と国内言論から批判された。このため、大統領直属の国際経済補佐官制度の復活を求める声も出ている。
今回の円安が韓国経済にとって深刻なのは、過去2回(1988~90年、04~07年)の円安に比べ世界経済が不況期にあり、世界市場で競合する製品が多く、被害が大きいからだ。過去2回の円安では競合する電機・電子、自動車、機械類などで被害があったが、自動車はまだ輸出比率が低かった。だが、今回はそのウエートが大きいため、被害も甚大だ。
未来アセット証券によると、日本企業の輸出製品の単価は、円安効果で昨年11月から今年3月末までの期間に平均5%低下した。これに比べ、韓国の輸出製品の単価は0・5%低下するにとどまり、価格競争力が低下した。
経済専門家たちは「結局は企業自らが競争力を高める以外に解決策はない。品質向上と技術開発だ」と指摘する。為替変動に一喜一憂しない経済へと体質改善を進める政策の再構築が必要なようだ。