東北旧石器文化研究所の藤村新一・副理事長が旧石器の発見をねつ造していた事件は、考古学界だけでなく、社会に大きな衝撃を与えた。一般の古代史ファンの夢をも無惨に打ち砕いたことは残念でならない。
温故知新(古きをたずねて、新しきを知る)ということばがあるが、古代史の探究は、人類の歴史や民族の変遷を知る手がかりとなり、「発見」はさまざまな示唆を与えてくれる。高松塚など多くの遺跡発掘で、古代韓半島と日本の密接な関係が明らかになり、その後の韓日交流活性化の一助となったことは、古代史研究の大きな成果であろう。
朝鮮奨学会が創立百周年を記念して今月24日、東京・新宿で朝鮮古代史シンポを行う。南北の和解をうけて、韓国と北朝鮮から古代王朝の高句麗や渤海、百済、新羅の専門家が集い、それぞれの研究成果を発表し合う。こういった試みは初めてで、日本との関係においても、新たな発見があるのではないかと期待される。
古代史研究は、自国の歴史のみならず、周辺国との関係を知るうえで不可欠のものだ。日本と韓国の間には、いまだに「任那日本府説」を唱える学者がいるなど、歴史観に隔たりがある。
そういった隙間を埋めるのが、遺跡の発見と発掘調査だが、日本側の調査はなかなか進まない。その妨げとなっているのが、宮内庁が管理している天皇陵や陵墓参考地で、全国に894カ所もあるという。考古学者らが再三、学術調査を依頼しているにもかかわらず、宮内庁は皇室財産であると主張し、一般の立ち入りを禁止している。
これら古墳の発掘調査が実現すれば、歴史のなぞにスポットがあたり、古代の韓日関係を解明する大きな手がかりになることはまちがいない。東アジア全体の交流の実態についても明らかになるだろう。遺跡は人類の宝であり、東アジアの古代史研究を促進するためにも、日本の天皇陵の開放が待たれる。(A)