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2000/08/04

<鳳仙花>◆在日のプロ野球4割打者◆

 日本のプロ野球セリーグは巨人が独走体勢に入り、ペナントレースの興味が薄れつつあるなかで、「在日」選手の活躍が話題をさらっている。

 横浜の金城龍彦内野手(24)がその人だ。3割9分2厘。8月2日現在の打率だ。夢の4割打者をめざすのはイチロー(オリックス)だけではない。まだ規定打席に達していないが、8月末ごろには打率部門のトップに名前が登場するはずだ。

 金城選手の持ち味は積極的な打撃と俊足だ。しかし、人間はどこに才能が潜んでいるのかわからない。昨年、投手として横浜に入団したが、すぐに野手に転向。しかもスイッチヒッターをめざし、ファームでプロとしての力をつけた。

 この野手への転向も思い切りのいい金城選手らしい。投手から野手への転向は結構あるが、普通、何年かやって通用しないときにやるものだ。また、ヒーローの出現は運も大きく左右するのが常だが、金城選手の場合も進藤選手の怪我でチャンスが巡ってきた。
 ところで「金城」といえば、先ごろ直木賞を受賞した在日の作家の名前が金城一紀だ。こちらは「かねしろ」だが、横浜の金城選手は「きんじょう」と読む。奇しくも二人の金城が話題にのぼることになった。

 金城選手は大阪市出身の在日3世で、本名は金龍彦。プロ野球近鉄の選手だった父の影響で小学生から野球を始め、近大付属高校2年のときに甲子園出場、社会人野球の強豪・住友金属和歌山でもエースだった。

 金城選手はプロ2年目だが新人王の有資格者。首位打者をとれば新人王は確定だ。セリーグの歴代新人王で打率3割に達したのは過去4人しかいないそうだ。シーズンを通しての打率4割はかなり難しいが、在日新ヒーローの夢に向けた打棒に注目したい。(T)