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2001/11/23

<鳳仙花>◆アン・チョルス◆

 取材先で、「素晴らしい韓国の起業家がいる」と聞いた。アン・チョルス(安哲秀)氏(39)がその人で、彼が開発したコンピューターのウイルス対策ソフトは韓国でシェア70%を占め、売上では世界6位というのだからすごい。

 そのソフトは日本にも本格的に導入され始めており、本紙(11月9日付)でそれを導入した日本の通信ソフト企業を紹介したが、ベンチャー業界だけでなく、大手のNECも提携して販売に乗り出した。それだけウイルス撃退に優れたソフトなのだろう。

 彼は医者一家の生まれで、ソウル大学の医学部卒業が示すように医者になることを宿命づけられていた。だが、ウイルスにパソコンを侵され、独自にワクチンソフトを開発した。これがきっかけになって会社を設立(95年)し、今日に至っている。ソフトの技術力もさることながら、大学生の人気も高く、入りたい会社、一緒に仕事したい人の1位に挙がっている。一体どんな人物なのか。ますます興味が湧いてくる。

 夏目漱石の孫である夏目房之介氏は、専門雑誌に掲載したアン・チョルス氏とのインタビューで、「安氏の印象は、いわゆる事業家、ことにベンチャー系のそれとは全く異なる。一番しっくりくるのは学者である」と述べている。また、「何でも同じなんです。基礎をこつこつ固める。そうすれば成績は自然と上がる。集中力は歳をとるほど上がりますね。地道な方法は時間がかかるけど、最後は必ず勝ちます」という正攻法に脱帽したという。

 素晴らしい人材が育っていることは喜ばしい。それも世界的な技術を創り出し、日本の人からも尊敬されている。特に、地道にこつこつやることは在日にとっても鏡ではないだろうか。(S)