アジア諸国の目が小泉純一郎首相の靖国神社参拝に注がれており、参院選挙での圧倒的勝利の余勢をかって強行すれば、アジア諸国との関係が最悪の事態になることも予想される。
靖国参拝をなぜこれほど問題にするのか。それは、周知のようにここに第二次大戦のA級戦犯が合祀されており、日本国民を代表する首相が靖国を参拝することは、日本が過去の侵略戦争を反省していないと映るせいだ。
日本には残念なことに戦没者を祀る国立墓地がない。宗教色を排した国立墓地をつくれば、靖国問題も一気に解決するはずで、ようやく野党などから国立墓地構想が出てきた。
韓国には1955年に設立されたソウル国立墓地と85年に完成した大田国立墓地がある。ソウルの国立墓地を訪れたことがあるが、冠岳山のふもと140万平方㍍の広大な敷地に朴正煕大統領をはじめとする歴代大統領や「6・25」(韓国戦争)で逝った英霊などの墓が整然とならび、心から感動した。
韓国を訪れた要人は必ずといっていいほどソウルの国立墓地を訪れる。日本の田中角栄、中曽根康弘、竹下登、宮沢喜一といった歴代首相もここを参拝しており、外交儀礼として欠かせないものになっている。
ソウルの国立墓地は遺族はもちろん、家族連れなどが常に参拝し、課外授業の一環として小学生なども歴史の勉強に訪れており、国民に親しまれる存在となっている。
ワシントンのアーリントン墓地、パリのペールラシェーズなど、どの国にも行っても国立墓地があり、祈りを捧げる市民の姿が目につく。国立墓地というのは、その国の歴史を刻む厳粛な場であり、国民が誇りとなっている。日本は、米国、フランス、韓国などを手本に国立墓地の建設を進めてはどうだろうか。(N)