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2001/05/25

<鳳仙花>◆洪昌守と金城一紀◆

 強烈な右ストレートがまともに当たり相手はぶっ飛んだ。目の前でこんなすごいパンチをみるのは初めてだ――日本から取材に駆けつけた知人の記者が電話口で声をあらげた。

 プロボクシングWBCフライ級チャンピオンの徳山昌守=本名洪昌守(ホン・チャンス)が、ソウルでの防衛戦で韓国のソ仁柱にKO勝ちした。彼は、朝鮮学校を出た朝鮮籍の在日3世。防衛戦には朝鮮総連の300人近い若者が大応援団を組織し、観客席で「統一旗」を振り、韓国のスポーツ紙は「ボクシングの南北対決、北のパンチが勝利」と報じた。

 試合前から何かと話題を振りまいたが、彼は冷静だった。ソウルから戻って直後、日本のテレビ番組に出演、「相手の選手を倒すことだけに集中した。4ラウンドで相手が足にきているのを隠そうとしているのが分かったので、次のラウンドでKOを狙った」と述べた。
祖国統一の文字を書いたガウンで登場したり、勝利後に「私たちは一つだ」と叫んだりするパフォーマンスは、在日の祖国統一への思いを伝える積極的な行動である。だが、それが評価されるのも、「相手を倒して勝つ」――ボクシングでこの一番大事なことを実践したからだろう。

 一方、昨年小説「GO」で直木賞をとった在日3世の金城一紀の直木賞受賞作品「GO」が映画化される。

 作品「GO」は在日韓国人青年と日本人女性が愛し合う青春小説物だが、そのモチーフはシリアスで、「国籍とか民族に縛られたくない」という割に日本人に在日青年の悩み、在日世界のことを知ってほしいという思いが込められている。
 
 最近、「在日韓国人社会の消滅」という本が物議をかもしているが、現実の世界はそんな「頭の中の世界」とは違うことをこの2人の在日3世は身をもって示しているように思える。(S)