最近、韓国から来た大変エキサイティングなミュージカルパフォーマンス「ナンタ」と朝鮮朝時代の女流詩人の生き様を題材にした韓国の創作オペラ「黄真伊(ファン・ジニ)」を見る機会があった。
なべや包丁など台所道具を使って、ひたすらそれらを打ちたたく、まさしく乱打(韓国語でナンタ)するリズムは圧倒的な迫力があった。本当に野菜炒めをつくっているのか、会場内にプーンと臭いが漂い、手品あり、観客を巻き込んだギョーザ大会ありで、観客から拍手喝采が飛ぶ大うけだった。出演者たった5人で、あそこまで盛り上げるなんて、スゴイ若者たちだと思った。
一方のオペラ「黄真伊」は、水準の高い立派な作品だった。オペラといえば、西欧の真似に陥りやすいが、その声量といい韓国人歌手の力量のすごさを知って脱帽した。
黄真伊といっても日本ではあまり知られていないが、16世紀に開城で名妓とうたわれた高級妓生(キーセン)で、その美貌、才気、楽曲の腕で多くの人を魅了した、韓国の歴史上で最も有名な女性の1人である。韓国にこんなに素晴らしい女性がいたという事実を知れば、それだけで「ちょっと気になる国」になるだろう。
インターネットで在日女学生が「あなたたちは、黄真伊という女流詩人を知っているだろうか」と問いかけ、「彼女の物語を漫画化している。少しでも多くの人に触れてもらい、近くて近い韓国に興味をひくことができればと思う」と告知していたのを思い出した。
全く異なる2つの観劇であるが、オペラを鑑賞した天皇も述べているように、「両国の理解と友好」に近づく契機になったのは間違いないと思う。食だけでなく、韓国にはこんなに素晴らしい芸術、芸能もあり、それを演じる人たちの力強さ、またそれを通じて歴史が分かれば、これこそ国民レベルの真の友好につながるのではないだろうか。(S)