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2001/04/06

<鳳仙花>◆禍根残す歴史教科書◆

 「韓国併合のあと、日本は植民地にした朝鮮で鉄道・潅漑(かんがい)の施設を整えるなどの開発を行い、土地調査を開始した」。これは、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史教科書の一節である。日本が鉄道を引いたのは略奪物資を運ぶためであり、潅漑施設を作ったのも出来た米を奪うためであった。

 1953年、韓日国交交渉会談時に日本側首席代表の久保田貫一郎外務省参与が、「日本の韓国植民地支配は韓国にとってもよかった」と発言して韓国側が反発、韓国全土で反日運動が起こったが、それを思い出せる記述だ。

 「久保田妄言」は日本側の謝罪で幕を閉じたが、今回の検定通過については、町村信孝文部科学相が「本を読んでもらえれば、韓国、中国の懸念も解消されると期待する」と述べるにとどまっている。

 韓国政府は外交通商部声明として、「一部教科書が自国中心主義的な史観から、過去の過ちを合理化・美化する内容を含んでいる」との遺憾の意を表明した。

 今後は公式な再修正要求、日本大衆文化追加開放の中断なども検討するという。場合によっては、駐日韓国大使の召喚もあり得るという話すら出ている。事実、韓国では対日批判が強まっている。

 「韓国は国定教科書かも知れないが、日本は多様な教科書がある」と、韓国や中国の抗議に反論する向きもある。だが、教科書は小説とは違うのである。事実をねじ曲げて、勝手に記述することは許されない。
 98年の韓日両政府によるパートナーシップ宣言以降、両国は友好関係を深めてきただけに、本当に残念だ。

 敗戦国ドイツでは歴史家を中心に、被害国ポーランドなど西欧諸国と「国際歴史教科書対話」を重ね、教科書の修正を行ってきた。日本にも同じ努力が求められてはいないだろうか。(L)