アジアと欧州の25カ国が参加するASEM(アジア欧州会議)の首脳会議が、「韓半島の平和のためのコペンハーゲン政治宣言」を採択した。同宣言は、小泉首相の北朝鮮訪問を歓迎、「両国の問題だけでなく国際的な安全保障の懸念を解決するためのトップ会談」と高く評価。参加した各国首脳からも「称賛の嵐」を受けたといわれ、久々に日本外交が世界の注目を浴びた会議だった。
ASEMは96年に発足、1年おきに首脳会議を開いているアジアと欧州を結ぶ最大のチャンネルだ。2004年の会議には新たに15カ国が加盟、40カ国が参加する予定だが、アジアと欧州の全体が、朝日首脳会談を「東北アジアの緊張緩和への大きな一歩」と支持したことの意味は大きい。拉致問題を連日集中報道する日本と、国際社会の受けとめ方にこのような違いがあることは知っておくべきだろう。
もっとも各種世論調査でも明らかになっているように、朝日首脳会談そのものに対する日本国民の評価は60―80%と高い。「歴史を動かしたが悲劇は残った」と言った人もいたが、拉致問題と関係正常化を峻別する冷静さをみせていることは注目するに値する。
いま世界は米国のイラク攻撃をめぐって緊張感に包まれている。来年2月攻撃の計画で50万人の地上部隊が準備されているとの観測がまことしやかに伝えられている。また、パレスチナとイスラエルの戦火はやむことなく、国連の仲裁も無力化状態だ。
そんな国際情勢だけにアジアの火薬庫と世界から見られている韓半島で緊張が高まれば、それこそ世界平和は脅かされかねない。ASEMは延び延びになっている第2回南北首脳会談の開催が重要だと訴えたが、北朝鮮はこれにも応じて平和への強いメッセージとしてほしい。(S)