昨年11月末、金剛山観光を取材するために、初めて北朝鮮を訪れた。韓国東海岸の束草港から北の長箭港まで、韓国人観光客に混じっての船旅だった。
金剛山は奇岩で作られた峰や渓谷が、東西40㌔、南北60㌔にわたり、古くから民族の霊峰として親しまれてきた。
奇岩と木々の緑の織り成すコントラストがとても美しく、天候の変化によって景色が豹変し、様々な美しさを見せるのも面白い。頂上まで登るのは大変だが、それだけの価値ある山である。昔から朝鮮八景の一つに数えられていて、数多くの詩に詠われてきた場所でもある。日本ではなかなかお目にかかることのできない景観だ。
海岸沿いに奇岩と松の木が立ち並ぶ絶景の海金剛。透き通った水面に山が映って華やかな景観を見せ、湖岸に北朝鮮党幹部の保養所もあった三日浦など、まさに桃源郷の世界である。
金剛山の美しさに魅せられ、春夏秋冬欠かさず通って写真集を出版した韓国人写真家もいたが、その気持ちも分かる気がする。
だが、98年の観光開始以来、年々観光客が減少している。理由の一つは、往来が不便なためだ。陸路ならあっという間なのに船だと3時間もかかる。また登山路など観光以外の地域に向う道路には金網が張られるなど規制が多い。陸路観光が実現すれば時間が大幅に短縮できるし、規制を緩和すれば観光客も増えるのにと残念な気がした。
それから10カ月、金剛山観光をスムーズにするため、軍事境界線を通る南北1・5㌔間に臨時道路を敷設し、12月から車両運航を開始することになった。朝日首脳会談が実現、国交樹立の道も開けた。将来、金剛山を多くの日本人が訪れる日も来るだろう。世界の金剛山といわれる日が待ち遠しい。(L)