第14回アジア競技大会が今月29日、釜山で開幕する。今回は、北朝鮮の参加でアジアオリンピック評議会(OCA)加盟42カ国がすべて出そろう。さらにアフガニスタン、東ティモールの非加盟国も参加する予定で、史上最大の大会になりそうだ。
すでに、北朝鮮の白頭山と韓国の漢拏山で採火された南北の聖火が軍事境界線近くの臨津閣で一つに合体し、29日の開幕を待つ釜山まで、7457人の聖火ランナーによって運ばれている。北朝鮮が韓国で開かれる大規模な国際大会に参加するのは初めてで、今大会は南北の和解と平和共存を訴える画期的な大会になることだろう。
アジア大会といえば、忘れられない思い出がある。90年3月の札幌冬季大会。南北の離散家族が40年ぶりに再会するというニュースが飛び込み、あわててホテルからタクシーを飛ばし選手村に向かった。もう夜の10時を回っていた。
「オッパー」、慟哭(どうこく)して駆け寄る北の妹を韓国から駆けつけた兄が無言で抱きとめる。感動で手にしたカメラが震え、ファインダーが曇った。妹の韓弼花さんは、64年のインスブルック冬季五輪女子スピードスケート3千㍍の銀メダリストで、北朝鮮の選手団役員としてこの大会に参加していたのである。京畿道で牧場を経営している兄の韓弼聖さんが、妹に会いたい一心で来日し、感激の対面が実現した。8歳で生き別れた妹の面影を確かめるように、何度も顔を見つめ、抱き締めた腕を放そうとしない弼聖さんの姿がいまも目に浮かぶ。
今回の釜山大会でも、感動のドラマが生まれ、南北の温かい交流風景がみられるに違いない。米の同時多発テロ事件から1年、米のイラク攻撃が焦点となっているいま、釜山アジア大会が発信する平和のメッセージは世界に大きなインパクトを与えることだろう。(A)