東京から電車で3時間、陶芸の里として有名な栃木の益子町がある。この一角にある陶芸メッセ益子で、いま「壷中の天地 合田好道展」が開かれている。故合田氏は韓国で窯を開き、韓国と日本の陶芸界を結んで韓日交流に貢献した知られざる陶芸家である。
合田氏は1910年、香川県生まれ。当初は画家を志していた。戦後間もなく、濱田庄司を頼って益子に移り住むと、絵画、書、陶芸に才能を見せ、益子に新しい美意識を吹き込んだ。
益子で陶芸を志す者たちへの良き助言者であった。韓国陶芸の理解者で民芸運動で知られる柳宗悦氏とも親交があった。
韓国に渡ったのは1974年、64歳のときである。ある韓国人陶芸家と知り会ったのがきっかけで、共同で合田氏が指導する新窯を韓国に作ることとなり、慶尚南道金海郡進礼面晴川里に金海窯を開いた。韓国人陶工とともに象嵌や刷毛目、赤絵の技法を用いて作陶を重ねた。益子焼きと韓国陶磁が融合したかのような新しい陶芸作品は、とても味わい深いものがある。柳宗悦や濱田庄司が心打たれた韓国陶磁に合田氏ものめりこんだであろうことが推測される。金海窯で作った作品は両国で好評を博した。韓国の陶芸家との交流も深まり、日本人のお弟子さんが韓国人女性と結婚する慶事もあった。
70歳を迎えて日本に帰国、益子に合田陶器研究所を創設し制作に励む。益子町が近年、韓国陶芸家との交流を始めるにあたっても、合田氏の人脈が役立ったという。96年にお会いしたことがあるが、韓国での思い出を懐かしそうに語られたのがいまも印象に残っている。
2000年2月に89歳で亡くなられたが、死の直前まで陶芸への情熱を燃やし続けた人である。展示会は9月29日まで。ぜひ一度、足を運んで見てほしい。(L)