W杯での韓国の快進撃が世界中を驚かしている。この韓国代表チームを8強入りさせたヒディンク監督の手腕は並みのものではない。
その手腕については、いろいろなことが言われている。まず上下関係の厳しい韓国には先輩に対する能動的なプレーが足りないと見抜き、ピッチ上から先輩後輩という関係を取り払った。その結果、上下関係から解き放たれた若手とベテランとの間に一体感が生じ、組織的な強さを引き出させることに成功している。
また経験豊富な選手に対しても厳しい注文を突きつけ、チーム全体に一定の緊張感を保たせた。このほか新人選手の育成にも力を入れており、目に付いた選手がいると代表に抜擢し、忍耐強く使い続けながらその潜在力を引き出した。イタリア戦の最後に登場した車ドゥリは、その代表例だろう。
「強豪との差を埋めるためには茨の道を歩むことが必要」と繰り返し強調するヒディンク監督。本番直前まであえて強いチームとの親善試合を組み、イングランドやフランスと互角に戦って、狙い通り選手たちは自信をつけた。
就任わずか1年半という短期間で韓国サッカーをここまで強くしたオランダ人のヒディンク監督の指導ぶりは、財界でも注目の的だ。「経営危機に直面した企業のトップが発揮すべきリーダーシップ」との声も聞かれる。勝利したイタリア戦では「ヒディンクを大統領に」の横断幕も現れた。年末に大統領選挙を控える韓国では、不正を繰り返す既存政治への不満が鬱積しており、監督の姿はあたかも「現状を打破する指導者」に映ったに違いない。
韓国の快進撃はまだ続いている。「ヒディンク韓国」への期待は、ますます膨らむばかりだ。(J)