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2002/04/05

<鳳仙花>◆小さな町の大きな挑戦◆

 民主主義(デモクラシー)は、ギリシャ語の人民(DEMOS)と権力(KRATIA)が結びついたもので、人民が権力をもち、自らそれを行使できた古代ギリシャの都市国家(ポリス)の政治形態から発展したものである。

 基本的人権、自由、平等を基本とし、近代民主主義国家はこれを手本とした。しかし、どれだけ、ギリシャの精神が生かされているか、日本社会の閉鎖性をみると、疑問に思う。

 そんな中で、3月31日、滋賀県米原町が日本で初めて永住外国人に投票資格を与え、隣町との合併を町民に問う住民投票を実施した。町内に住む永住外国人13人も町民として投票に参加したが、このうち11人が在日韓国人だった。

 これまで、在日韓国人をはじめとする外国籍者は、国籍の壁にはばまれ、選挙はおろか、住民投票権さえ与えられないできた。ギリシャのポリスに倣うならば、その地域に居住する者は、すべて同じ人民として、平等の権利を有するのが当たり前である。何千年も前の古代ギリシャで行われていたことが、どうしてこれまでできなかったのかふしぎでならないが、今回の米原町の英断は、日本社会に一石を投じた画期的なことと高く評価したい。

 約63万人の在日韓国人のほとんどは、植民地時代から日本に居住し、いまや3世、4世の時代を迎えている。その在日に社会参加の機会が与えられないのは、いかにも民主主義のルールに反するのではないか。

 村西俊雄・米原町長は、「地域社会の発展のためには、国籍に関係なく、住民が力を合わせていくことが必要だ」と語っているが、まさにその通りだと思う。

 今回、人口1万2000人の小さな町が起こした「革命」が、日本全国の自治体に波及し、国を変えるような潮流となることを望みたい。(G)