韓国で800人を超す観客を動員し、興行記録を塗り替えたという映画「友へ チング」を試写会で見た。その中に、「チングという言葉は親旧と漢字で書いて、長く親しい友という意味だ」というせりふが出てくる。「チング」、実にいい響きのことばだ。
韓国と日本はいま「チング」になろうと、交流を深め、必死に努力している。しかし、昨年の教科書問題や靖国問題にみるとおり、磐石な関係を築くのは容易ではない。
岩波書店がW杯共催を間近に控え、「日本の友への手紙・韓国の友への手紙」を収録した「別冊岩波」を発刊した。両国のサッカー関係者や政治家、学者、作家などが相手国の友人に宛てて友好への願い、苦言、提案などを率直につづっており、とても興味深い。
双方の手紙からは相手国と仲良くしたいという思いがひしひしと伝わる。東亜日報記者の李東官さんは、「日本を語るとき、まっ先に日本の友人の顔が浮かぶ。互いに善意と信頼の芽を育てていきたい」と書き、平松守彦・大分県知事は、「国と国との外交も大事だが、地域住民同士の顔が見えるローカル外交がもっと重要だ」と記す。
印象深かったのは、韓国人初のJリーガーとなった盧廷潤選手の「最も印象深いのはセレッソ大阪を離れるとき、空港まで300人ものサポーターが見送りに来てくれたことだ」ということばだ。盧廷潤選手を見て、韓国を知り、韓国に興味を持った人も多いだろう。
これらの手紙を読んで、交流は、国ではなく、人が担うものだということを強く感じた。国際交流などと大げさに構えないで、互いに相手国に友人を増やし、「チング」になる努力をすれば、自然と韓日関係は強まると思う。ところで、あなたは隣国に友人がいますか。(N)