最近の教育改革や憲法改正の動きなどを見て、子どもの教育に不安を覚える在日の親も多いことだろう。そんな中、保護者として、もしくは地域住民の1人として、地域における教育問題を日本人保護者と共に考え、行動している「奈良・在日外国人保護者の会」という集まりがある。
11年前の92年9月、民族教育を受ける機会の少なかった奈良在住の2世の親たちが中心となって結成した。保護者同士の交流の場を広げるとともに、子ども達に民族との多様なふれあいの場をつくり、地域に多文化共生社会を作り出そうとの思いで運動を始めた。
発足メンバーの1人である李和子さんによると、「最初は小さな集まりで手探り状態で始めた。子どもたちに在日の自覚を持ってもらいたい」と最初に取り組んだのが「オリニ(子ども)キャンプ」だった。
それが次第に共感と広がりを呼び、11年目を迎えたいま、今年の「オリニキャンプ」には在日コリアンだけでなく多様な外国籍の子ども・保護者も参加するようになり、人数も300人を数えるまでになった。
オリニキャンプ参加者からは未来の指導者も育っている。大学生となって運営に加わる子、中高生の会を作って自発的な勉強会を行うなど、運動は引き継がれ、広がっている。
奈良県内にいくつかの支部も出来、李和子さんは現在、生駒地域の責任者を務めている。この間の取り組みの結果、生駒地域の学校で本名を使う在日の子どもは半数に達したという。全国でも最も高い本名使用率だろう。教育委員会や先生方と話し合う場も恒常的に設けられているという。
昨年、10周年記念パンフ「輝く瞳」を発行し、地域からの声がいかに大切かを訴えている。奈良の取り組みから学ぶことは多そうだ。(L)