韓国映画が身近になっている。東京国際映画祭でアジア賞を受賞した「殺人の追憶」など10本上映されたのに次いで、現在開催中の東京フィルメックスでは5本上映されている。映画祭だけでなく一般の映画館でも韓国映画がかかる本数が増えており、特に来年には「太極旗を翻して」「武士」など大作の封切りが相次ぎ、過去最大の韓国映画ブームを迎えることになりそうだ。
おそらく、いま日本の庶民にとって、最も身近かな韓国大衆文化は映画ではないだろうか。これは、あの大ヒット作「シュリ」の大きな功績だが、その後もキラリと光る映画が少なくない。
アジア映画を中心に上映している東京フィルメックスのオープニング作品「春夏秋冬 そして春」はそんな映画の一つだ。大人になるまで映画をみたことはないというキム・キドク監督作品で、四季と1人の僧の人生を通じて喜び、怒り、悲しみ、楽しみを静かに描写しているが、映像の素晴らしさは驚嘆するほかない。
また、「地球を守れ」というコンペ出品作は、韓国映画人の才能のほとばしりを実感させるものだ。1人の青年が地球上に起こる様々な害悪の背後には異星人がいると信じ、大企業の社長を誘拐して問い詰めるというコミカルな物語だが、この映画には社会的なテーマが鋭く覗いて見える。チャン・ジュヌアン監督32歳。モスクワ映画祭で監督賞を受賞しただけの力のある映画だ。
「映画は時代の感性を映す」という。韓国映画には社会との関係性に視座をおいた作品が少なくないが、最近ではエンタテインメント仕立てで映像化しているのがいい。作り手は何をみせようとしているのか、を考えさせる映画は見る側にとっても楽しみであり、韓国映画は多様な広がりをみせそうだ。(S)