「鳳仙花」。韓国人なら誰でも知っている、広く世代を超えて歌い継がれている国民的歌曲だ。南北ともに歌われている国宝級の歌である。韓民族が日本の植民地支配下に入る8月になると、この歌のことが思い起こされる。
93年前の8月22日、日本の強要で韓国併合条約が調印された。その1週間後の29日に同条約が発効。この日を韓国では「国恥日」と呼んでいる。8月15日は解放記念日だが、34年11カ月17日間に及ぶ植民地統治が始まった屈辱の月でもあるのだ。
この歌は、日本への抵抗精神を象徴するものとして広く民衆に愛唱された。1920年、作曲家・洪ランパ22歳の時の作だ。前年の3・1独立運動当時、彼はバイオリンを質に入れ運動を応援した。曲にも独立に対する強い信念が込められている。6年後に歌詞がつけられ今日の「鳳仙花」として誕生した。
「垣に咲く鳳仙花よ/汝が姿あわれなり/いと長き夏の日に/美しく花咲くころ/うるわしき乙女ら/汝を愛で遊べり」
鳳仙花という花は東南アジア原産といわれ、夏に紅、桃、白色の花を咲かせ、庭に集まった乙女たちはその花で爪をそめる風習があった。
民族の運命を秋に散る鳳仙花になぞらえて、四四調の詩で表現したのである。個人的にも結婚式でこの歌を一緒に歌い、民族の名に恥じない夫婦になることを誓った思い出の歌である。
昨年、「鳳仙花」と題して洪ランパの評伝を書いた遠藤貴美子氏は、この純朴な内容の曲が力を持っているのは、理屈ではなく韓国人の魂の情景が込められているからであると述べられた。
8月に「鳳仙花」を歌えば心が自然と和んでくるから不思議だ。(S)