また8月がめぐって来た。8月になると、いやが応でも、戦争と平和について考えさせられる。
アジアには、戦争と平和をテーマにした歴史博物館がどこの国にも設置されている。韓国には、忠清南道の天安市に独立記念館があり、ソウルにも戦争博物館があるが、歴史資料の展示だけでなく、植民地時代の様子が一目でわかるように模型や人形が置かれ、とてもわかりやすい。子どもたちから老人まで、大勢の国民がここを訪れており、過去の歴史を知る貴重な学習の場となっている。
中国の天安門広場には革命博物館と歴史博物館が並び、盧溝橋には中国人民抗日戦争記念館が設置されている。シンガポールやフィリピンにも、太平洋戦争の史実を伝える博物館があり、歴史教育に力を入れている。
これに対して、歴史教育に対する日本の取り組みは遅れているといわざるをえない。韓国や中国からの「歴史歪曲」批判に対し、95年8月に、当時の村山富市首相が「アジア歴史資料センター」の設立構想を発表、ようやく2001年11月に国立公文書館内に設置された。
しかし、これは展示はせず、インターネット専用(http://www.jacar.go.jp)で情報公開し、センターといっても建物はない。
外務省など関連機関が保有する資料約2700万件を一般に無料で公開し、英語、韓国語、中国語でもアクセスできる点は評価できるが、子どもや老人の利用はむずかしい。どちらかというと研究者向けで、これでは歴史資料の墓場になりかねない。
日本がアジアと共存していくためには、青少年の歴史教育が欠かせない。そのためにも、わかりやすく、だれでも利用できる歴史資料館が必要だと思う。(N)