近く離任する鄭誠培・駐札幌総領事が「帰国する前に言い残しておきたいことがある」と電話口で次のように力説した。
「韓国は独立して60年になろうとしている。もう過去のことにこだわらず、政府・国民も未来志向へと向かわなければならない。その未来志向の最大のテーマはFTA(自由貿易協定)であり、日本と直ちに結ぶべきだ。韓日は同じ価値観、同じ社会システムをもった仲間同士であり、どの国よりも条件は整っていると思う」
鄭総領事によると、十数年前のカナダ駐在のとき、米国、カナダ、メキシコ間のNAFTA(北米自由貿易協定)をめぐりカナダ国内に猛反対があった。どの国も利害が絡めば反対があるものだが、その後の結果は順調だ。メキシコも米国に産業支配されると恐れる声が強かったが、協定後3年で対米輸出は5年前に比べ3倍近い947億㌦を記録、外国人投資も急増した。メキシコを米国との統合市場とみて多くの投資家が進出したからだ。
目先のことにとらわれない先見の明がいかに大事かを物語るものだろう。
FTAは多国間のモノ、カネ、ヒト、さらには技術の自由な移動を促進することにある。日本には農水産物というアキレス腱があり、韓国側には対日貿易赤字拡大の恐怖があるが、NAFTAの例にみるように大局的にみれば韓日関係をいま一段発展させる大きな契機になると考えられる。
7日の韓日首脳会談でこの問題が重要テーマとして話し合われ、共同声明に「政府間交渉の早期開始が重要」という文言が盛り込まれる見通しと伝えられる。韓日関にいま大きな懸案はなく、かつてない国民友好ムードにあふれている。タイミングもいい。韓日首脳の決断に期待したい。(S)