むかし、在米コリアンの取材で米国を訪れたときに、行く先々で「在日コリアンはなぜ韓国籍のままなのか」との質問をぶつけられた。米国に限らず、中国東北地方や中央アジアにも多くの韓国人が居住しているが、戦後60近くもたち、韓国籍を維持したままなのはほかに例がない。だが近年、帰化申請者が増えている。
毎年約1万人が帰化しているが、気が遠くなるほど多種多様な書類の提出を求められ、審査に2、3年もかかり、交通違反などのささいな「汚点」でも却下されるケースが多い。戦後処理の過程で、日本が国籍の選択権を与えなかったため、在日は、日本国籍をくださいと法務大臣にお願いしなければならないのが現状である。
国際法では、被植民地国が独立する際、自国の国籍か、宗主国の国籍か選択権を与えるのが一般的となっている。日本は、52年のサンフランシスコ講和条約で独立を果たすやいなや、それまで日本人だった旧韓国・朝鮮人と台湾人に国籍の選択権を与えず、一方的にすべて外国人扱いとした。これが在日の国籍問題に火種を残すことになった。
2001年に与党3党が共同で特別永住許可者(終戦を日本で迎えた韓国・朝鮮人と台湾人で、引き続き日本に居住している本人とその子孫)に届け出だけで国籍取得を認める「国籍取得法緩和案」を上程したが、国会審議まで至らず、その後うやむやになってしまった。
歴史的経緯からみて、特別永住許可者が届け出だけで日本国籍を条件なく取得できるような法整備がぜひとも必要ではないか。もちろん、各個人の選択権で日本国籍を希望する、韓国籍のままがいいという人もいるだろう。それは個人の自由である。日本は戦後処理の一環として、特別永住許可者に国籍の選択権を早急に与えるべきだと思う。(A)