「太白山脈」「商道」「許浚」。韓国でベストセラーとなった大河小説が日本語訳され相次いで出版された。いずれも骨太の歴史小説であり、波乱万丈の歴史と格闘する韓国歴史小説の醍醐味を堪能できた。
全10巻4000㌻を越す「太白山脈」(趙廷來著、集英社)は、韓国大学生の必読書といわれ、1945年の祖国解放から韓国戦争にいたる混乱した社会の中で肉親同士が左右に分かれて抗争する悲劇を描いている。知られざる歴史の暗部を初めて暴いた衝撃の本で、韓国で500万部を売った。
上下2巻800㌻を超す「商道」(崔仁浩著、徳間書店)は、200年前に実在した大商人、林尚沃の生涯を描いた物語である。お金を稼ぎながらもそれに執着せず、巨財のすべてを民のために投げ出したその生き方に感銘を受けたものである。300万部のベストセラーとなったのは、それだけ共感度が高かったからだろう。
上下2巻1000㌻を超す「許浚」(李恩成著、桐原書店)も300万部が売れた。450年程前に最下層の身分に生まれ、艱難辛苦の末、宮中の最高医についた名医・許浚の物語である。この許浚は、当時、臨床医学の百科全書というべき「東医宝鑑」を著し、日本や漢方の本場・中国にも大きな影響を与えた。
これらの本はいずれも大変厚いが、次はどうなるのかと読まずにいられなくさせるものがある。特に、主人公たちの生き様に接し、その驚異的な信念と実践に身震いするほどだった。歴史の掘り起こしとはこういうことをいうのだろう。人間は歴史的存在であり、歴史の連続の上に今日もある。
この3つの本が韓国と韓国人を深く理解する一助になるのは間違いない。日本でもぜひ多くの方が読まれることを勧めたい。(S)