2003年の新しい年が明けた。昨年は、サッカーのW杯で韓国の赤が世界を席巻した。今年は、韓国の色がレッドからイエロー(黄)に変わる。イエローは、来月25日に第16代大統領に就任する盧武鉉氏のカラーである。昨年末の選挙戦で、盧武鉉氏の遊説先は黄色い風船や黄色いマフラーで黄一色に染まった。韓国で吹いた黄色い風(ノーラン・パラム)である。
W杯の赤は「情熱」や「パワー」を表すが、黄色は「安定」「健全」を象徴する。病院のカーテンや壁を黄色にし、黄色の花を飾ると、病人の心が落ち着き、健康になるそうだ。盧武鉉氏の登場は、まさに高度成長でゆがんだ韓国社会をただし、健康を取り戻してほしいという国民の声を反映したものだと思う。
盧武鉉氏は、46年9月1日、カラスさえ食べるものがないといわれる慶尚南道金海郡で果樹園を営む農家の3男2女の末っ子として生まれた。小学校の学籍簿には「小農で生活は下流」と記されている。中学時代は、全校でトップを争うほど優秀だったが、学費を払えず1年間休学した。釜山商業高校に進学しても、アパートが借りられず、学校で寝泊りし、夜間は警備員として働いたという。
貧しいために大学進学を諦め、独学で29歳のときに司法試験に合格。判事をへて弁護士となったが、常に弱者を助け、学生運動に共感し、権力と闘い続けた。政界入りしても社会正義を貫く「抵抗の政治家」としての姿勢を変えず、地域対決を解消するため地盤以外から出馬して何度も落選の憂き目に遭っている。
権力もない、カネもない、あるのは庶民の信頼と支持だけという大統領の誕生は、韓国の憲政史上初めてであり、韓国社会は大きく変わるだろう。盧武鉉・新大統領の手腕に注目したい。(N)