先日、あるシンポジウムで知韓派日本人学者が、「冬ソナブームの中で日韓はダイレクトに交流をもつようになっており、在日韓国人の架橋的役割が薄れているとの危機感を持っている」と述べた。果たして危機なのだろうか。いや、むしろチャンスであり、在日をもっとアピールする必要があると思う。問題は何をアピールするかだろう。
知人の在日2世画家と話していたら、「在日のルネサンスを起こそう」と言い出した。在日社会では精神世界を豊かにする創造的な運動が乏しいといつも不満におもっていたので、何かピーンとくるものがあった。そういえば、美術の世界で世界に通用する在日の芸術家は多い。三笠宮殿下世界芸術賞を受賞した画家の李ウファン氏やフランスのギメ東洋美術館で展示会を開いた世界的な建築家・伊丹潤(ユ東龍)氏らの名前が思い浮かんだ。美術界だけでなく、いろいろな分野に隠れた在日の逸材がいるに違いない。
いうまでもなく、ルネサンスは13世紀末にイタリアのフィレンツェで起こり、全ヨーロッパに波及した人間解放の文芸復興運動だ。単に美術・文学にとどまらず、広く学問・政治・宗教など各方面にも清新な気風を引き起こして近代化の端緒をつくった。
さて、在日のルネサンスは何をめざすべきだろうか。盲目のバイオリニスト、川畠成道氏は最近、「曲を弾ける人を演奏家といい、それに表現を加えることのできる人を音楽家という。そして、芸術家はそれに魂を込めた人だ。私は魂を込める芸術家をめざしている」と述べていたが、参考になる言葉だ。
来年は韓日国交正常化40周年であるが、植民地化100周年であり、また祖国解放60周年に当たる節目の年だ。在日の芸術家は結束して、新風を起こしてほしい。また、在日のルネサンスを応援してほしい。途方もない夢物語ではない。「隗より始めよ」である。(S)