1980年代半ば、世界市場に中進国グループが台頭した。当時、NICS(新興工業国家群)と呼ばれ新聞紙上を賑わしたのは韓国、台湾、香港、シンガポールなど東アジア諸国(地域)とブラジル、メキシコの中南米国家。先進工業国サミットに対抗すべく中進国サミット開催の呼びかけもあった。
あれからおよそ20年。世界経済はブロック化を強め、ブラジルやメキシコは地域経済機構の一員になった。東アジアでは香港を体制内に取り込んだ中国が世界の工場として世界市場に躍り出た。その中国が韓国、日本、それにASEAN(東南アジア諸国連合)に対して東アジアサミットを2006年に開催しようと誘っている。注目すべき動きであり、ぜひ実現してほしい。
もともとこの東アジアサミット構想は、金大中・前大統領が組織した有識者会議が2001年に提案した経緯がある。相互依存を深めている地域経済の発展を図るため、指導者が忌憚のない意見交換をする場が必要だという趣旨だ。今度、中国が積極的に動き出したのは、2008年北京五輪もにらんでのことだが、中国のためというより、地域経済発展のため大きな意味があると思う。
それは、韓・日・中3カ国の域内貿易比重が1990年の11・2%から2002年には22・5%へと倍増しており、域内投資比重も3・2%から10・2%に高まっていることに如実に示されている。この傾向はASEAN10カ国も巻き込んで拍車がかかっている。
東アジアは世界でも最も古い文明圏の一つだ。昔から韓国、日本、中国は数限りなく交流を続け、同じ漢字圏としてつながりも極めて深いものがある。拡大EU(欧州連合)では統一憲法も作る段階にまで入っている。ヒト、モノ、カネさらに技術の速やかな移転などトップ会談ではいろいろなことが討議されよう。3カ国が中軸になる東アジアサミットには大きな夢があるように思える。(S)