北朝鮮船舶の日本寄港を制限できる「特定船舶入港禁止法案」が3日、日本の衆院を通過、今国会で成立する見通しとなった。
この入港禁止法案は、国際社会から見ると異例のことに映る。地球の72%は海であり、人類は航海と貿易によって繁栄してきた。このため、国際海洋法では、どこの国の船舶でも自由に寄港を認めるのが慣例となっている。特定国の船舶の入港を規制する法案は世界でも珍しく、92年に米国がキューバへの経済制裁の一環としてキューバ船の寄港を禁じたトリチェリ法があるくらいである。それをあえて、日本が成立させることには疑問を感じる。
先日、再訪朝した小泉首相は、金正日総書記との首脳会談で、「経済制裁は発動しない」と明言、成立してもすぐに発動することはないだろうが、拉致問題の解決が長引けば、制裁実施を求める声が強まるのは必至だ。だが、「圧力」をかければ、北朝鮮が軟化するという保証もない。
この入港禁止法案は、北朝鮮船舶と北朝鮮に寄港した船の日本への入港を一定期間禁止することができる法律で、発動されれば、北朝鮮経済が大きな打撃を受けるのは必至だ。現在、年間1000隻もの北朝鮮船舶が新潟、舞鶴、境港、博多、下関などに入港し、活発な貿易を行っている。北朝鮮の対日輸出は魚介類を中心に9000万㌦、対日輸入は繊維や機械類など1億7000万㌦にのぼる。
さらに懸念されるのは、在日の往来が制限されることだろう。万景峰号が入港禁止になると、肉親に会いに行ったり、物資を届けることができず、朝鮮学校の修学旅行も途絶えてしまう。こういった人的交流が著しく阻害されれば、拉致問題の全面解決や国交正常化交渉にかえってマイナスの影響を与えるのではないか。小泉首相は、訪朝時に「在日の地位向上」を約束しており、在日朝鮮人の権益擁護のためにも、慎重な配慮を望みたい。(G)