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2004/05/21

<鳳仙花>◆南北統一の大きな宿題◆

 南北統一は、韓半島に住む人々にとって世代を問わず大きな宿題だ。その南北を分断する38度線上にある非武装地帯(東西249キロ、幅4キロの軍事緩衝地帯)は、半世紀の長きにわたって人の立ち入り禁止が続いている。

 その非武装地帯のようすを写し、写真展「非武装地帯の自然」を日本で開催したカメラマンがいる。韓国・仁川出身の崔秉寛さんだ。

 崔さんは1950年生まれ。北朝鮮軍の攻勢が始まったとき、母親は生まれて間もない崔さんを抱いて戦火を逃げまどった。

 消えゆく自然、親たちの世代の生きる姿を残そうと独学でカメラマンになった崔さんは、韓国現代史の悲劇の象徴、非武装地帯を2年かけて撮影した。

 非武装地帯には世界的に貴重な鳥類、淡水魚、動植物などの生息がこれまで確認され、世界中の注目を集めてきた。

 韓国自然保護協会や外国の自然保護団体による学術調査が行われ、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界遺産」に登録申請してはとの声もあがった。

 崔さんはそこで兵器の残がいや残された自然、動植物を撮影したが、地雷原に間違って踏み込み、命からがら逃げ出したとき、「死の恐怖と平和の大切さを真に実感した」という。

 今回の写真展は「韓半島で二度と戦争が起きてはいけない。韓半島の平和は隣国日本にとっても大切で、一日も早く統一が必要なことを日本の人々にも理解してもらいたい」との崔さんの願いが、在日有志らの協力で実現した。

 いま日本では韓国ドラマ、映画が注目されているが、日本の若者を南北分断にも目を向けさせるきっかけとなったと思う。

 「統一のその日が来たとき、自分の写真は悲しい分断と誇らしい統一の記録となるだろう」と話す崔さんの言葉が焼き付いて離れない。(L)