国会が盧武鉉大統領を弾劾するという前例がないことが起こった。いうまでもなく、国会は国民が選んだ国権の最高機関であり、大統領は国民が直接選んだ国家元首である。最終判断は、9人の裁判官からなる憲法裁判所の手に委ねられたが、前代未聞の事態に正直「まさか、ここまでやるか」と驚いている。
しかし、大統領の「不在」にもかかわらず社会的な混乱は全くといってよいほどない。
経済への影響も瞬間的に株価が大幅に下がり為替レートが切り下がったりしたが、すぐに元に戻り、外国人投資家にもほとんど動揺がみられない。経済界も影響は「ほんの軽微」と楽観している。政治的異変にも韓国の諸システムはしっかり機能していることを示すものだろう。
駐日韓国大使館でも事態の対応に忙しかっただろうが、粛々とした雰囲気だったという。外交官のひとりは、「すべては法律の枠内で行われており、心配していない。韓国の現代史ではクーデターや暗殺など大変なことが多かった。そんな厳しい歴史を生き抜いてきたからだ」と話した。確かに平和的、民主的に行われている。
大統領弾劾を反対する市民たちは連日、ロウソク集会を繰り広げているが、秩序整然としており、ゴミ処理もきちんとしている。あの2002年W杯サッカー大会の時、市街に繰り出したサポーターたちの行動をほうふつさせるものだ。また、マスコミも政争をやめ、国民が一丸となって難局を克服しようと呼びかけている。IMF危機時の行動と似ている。
それにしても、海外同胞から見て恥ずかしい限りの政治騒動であり、何のトラブルもなく速やかに収拾されることを願うのみである。(S)