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2004/02/06

<鳳仙花>◆タブーなくなった韓国◆

 韓国映画「実尾島」(シルミド)が史上空前の大ヒットを記録している。1969年の北朝鮮ゲリラによる青瓦台(大統領府)襲撃事件を契機に、金日成主席暗殺のための北派遣ゲリラ養成を描いた映画だ。

 観客動員数は上映1カ月で史上最高の835万人を記録、1000万人突破は確実だとみられている。国民の5人に1人が観るというのだから驚くべき人気だ。なぜこれほどまでにヒットしたのだろうか。

 「歴史事実を描いた映画が好き」という若い女性の反応があったが、激動の韓国現代史には隠された真実が少なくない。この映画もこれまで封印されていた歴史事実に題材をとっている。

 映画の舞台となった仁川沖の実尾島。秘密裏に過酷な暗殺訓練が行われていたが、南北対話が開始される雪解けムードの中でこの暗殺部隊は歴史の闇に葬り去られた。この映画を観て初めてこの事実を知る人も多いだろう。

 4年前には北朝鮮の南派工作員の悲劇を描いた「シュリ」が大ヒット、日本での韓国映画ブームをつくった。その後南北分断を象徴する板門店での南北兵士の交流を描いた「JSA」がヒットしたが、北派工作員を描いたのはこれが初めてだ。

 知らされなかった歴史事実に向き合い、歴史の真実から何かを学び取っているのだと思う。南北分断という現実がそのような映画製作へと突き動かしている面もあろう。
 
 実尾島のヒットに連動するかのように、元北派工作員が名誉回復を求めてデモする姿があった。かつては考えられないことだ。このような映画上映といい、日本大衆文化解禁といい、 韓国は急速にタブーのない社会になろうとしているようだ。(S)