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2005/12/16

<鳳仙花>◆連載「柳宗悦と朝鮮」に思う◆

 「朝鮮問題という困難な問題での思索と実践を通して、柳宗悦は普遍的人類愛や人間の生命への歓喜を讃えようとしたと考えられる」

 本紙連載中の「柳宗悦と朝鮮 自由と芸術への献身」が今週号で最終回を迎えた。その最後の締め括りの言葉だ。合計78回、昨年6月末から丸1年半に及ぶ長期連載は、本紙にとっても貴重な経験だった。「出張で先週号は読めなかったので送って下さい」という熱心な日本人読者、在日の有力経済人からも「欠かさず読んでいます。素晴らしい内容に感銘しています」と最後まで温かく迎えられた。

 この連載は、朝鮮工芸品への愛情、そして日本植民地下にあった朝鮮民族の自由を願った柳宗悦(1889-1961年)の全貌に迫った著作であり、未発表資料も取り入れ、初めて明かされた事実も少なくない。特に日本人でありながら、身の危険も省みず朝鮮の独立を公然かつ完全と主張し、「誤れる日本」を批判し続けることができたのは、「永久平和論」のカントの影響も大きかったとする研究成果は特筆に値する。

 著者の韓永大氏から手紙を頂いた。そこには、「柳宗悦の思想家としての本質を、日本人研究家に先立って、幾分なりとも明らかにし得たことは、韓国人として、また特に在日として、多少の意味があるのではないかと考えております。遠くは30年前に柳に接し、近くはこの5年の執筆に費やし、その間の努力が無駄にならず、柳への熱い思いを公表できたことを本当に嬉しく思っております」と書かれていた。民族の苦難を助けてくれたことへの恩返しなのだろう。

 本紙連載中に柳宗悦が創設した日本民藝館(小林陽太郎理事長)で、羅鍾一駐日大使、皇太子殿下、指揮者の鄭明勲氏らが参加した日韓友好音楽会が開かれた。また、「韓国女性の粋と美」展(20日まで)が開かれるなど、韓日交流の拠点の一つになっている。朝鮮美の探求者、柳宗悦の精神を今に蘇らせることは右傾化が憂慮されている日本にとって大切なように思われる。(S)